蔵書

福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

芝木好子 「光琳の櫛」

えしぇ蔵は文章がしっとりと優しい感じのものが多い女流文学には目がないので結構集めています。中でも冊数の多いのが宮尾登美子と芝木好子です。個人的にはこの二人の作品ならハズレなしと思っています。女流作家の場合、日本の伝統芸を背景に人間ドラマが展開されるというものがよく見受けられますがこの作品もそうです。ここでとり上げられているのは「櫛」です。古い櫛をたくさん集めているある料亭の女将さんが主人公です。かつて日本の女性がその装飾の一つとして愛用していた櫛には、その持ち主の女性の悲喜こもごもの思いがこめられていると主人公は考えています。そうなると愛おしい櫛もあれば、捨ててしまいたいくらいに気持ち悪い櫛もあったりするわけです。主人公は人間と対しているように櫛へのさまざまな感情を露にしています。そしてある日、究極の一品に出会います。それが尾形光琳作の櫛「鷺文様蒔絵櫛(さぎもんようまきえぐし」です。彼女はなんとしてもその櫛を手に入れたいという情熱を燃やし、そこに恋愛もからんで話は盛り上がっていきます。作品としては構成も完璧ですし、文章は美しいし、ドラマ性もあります。いつもながらそつのない仕事をする人です。後で知った話ですが、この物語に登場する尾形光琳作の櫛「鷺文様蒔絵櫛(さぎもんようまきえぐし」は実在するそうです。東京青梅市の「櫛かんざし美術館」でお目にかかれるとか(主人公のモデルとなった人も実在するそうで、その人も約3000点も集めたそうです)。あなたもこの作品を読んだら絶対に本物を見に行きたくなると思いますよ。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

谷崎潤一郎 「少将滋幹の母」

日本の作家の中で最高峰に位置する谷崎潤一郎のどんな点が優れているのか?という質問を受けたとすれば、とにかくこの一冊「少将滋幹の母」を読んで下さい。読めばわかります。というのが最も的確な回答かと思います。この作品のように美しさと妖しさと知性と気品を感じるものを気負うことなく平然と書けるこの大作家の力量を目の当たりにすると、あぁやはり遠い人だ、違う世界にいる人だと思わずにはいられません。この作品は昭和24年の11月から昭和25年の2月まで「毎日新聞」に連載されました。言うまでもなく非常に絶賛され、これまでに何度も舞台化、映像化されました。物語の舞台は古典を題材にした平安時代です。「今昔物語」、「平中物語」、「後撰集」、「十訓抄」などをベースにし、そこに自分の創造である架空の物語「滋幹日記」を絡めて雅な世界を描きあげています。少将滋幹の母というのは高齢の大納言藤原国経の若妻である北の方のことで、祖父と孫ほども歳が離れています。それを横から奪おうとするのが当時菅原道真を太宰府に追い出して時代の主役となった左大臣藤原時平です。一方で国経の目を盗んで時々北の方に手を出していたのがあの好色で有名な平中です。北の方は三人の男の愛情の中で翻弄される立場にいます。少将滋幹というのは北の方と藤原国経の間にできた子どもで、母親が左大臣藤原時平に奪われたので幼い頃から母親と自由に会うことができませんでした。母を恋う想いを抱いたまま成人した少将滋幹がついに母と再会するという場面で物語は終わります。この作品は谷崎潤一郎自身の母への想いを描いていると言われています。甘くもあり、せつなくもあり、滑稽でもあり、悲しくもある、まさに不朽の名作です。日本の美を文字で表現したというふうにも言えると思います。是非是非、読んでみて下さい。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

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