蔵書

福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

横溝正史 「獄門島」

推理小説好きな方は必ず、そうでない人も一度は経験したことがあると思うのが、トリックにがっかりすることです。推理小説というのはいろんな手がかりを提供する段階において不可能と思われる状況を作っておいて、さて、どうすればこれが可能になるのか?と読者に考えさせます。その考えることが楽しいわけで、自分なりの答えを用意した段階で最後の種明かしを読んで、そこで、やっぱりそうだった!とか、なるほどその手があったか!と思えてまた楽しいわけです。ところが非常に多くの作品で、え?そういうトリック?そんなの不可能じゃないの?そんなのあまりにバカげてない?と、種明かしにがっかりすることがあります。現代には山ほど推理小説が世に出回っていますから、時代を経るごとにがっかりさせられない作品に出会う確率がどんどん減っていくのは避けられないことです。中にはトリックではなく雰囲気が好きだからとか、単純に作家が好きだからという理由で選ぶ人もいますのでそういう人は問題ないと思いますが、トリックで唸りたいと思う人は是非、この作品のような傑作をお勧めします。なるほど!その方法なら可能だ!と誰しも納得されると思います。作品の最初から注意してじっくり読めば、確かに答えに行きつけるようになっていますのでフェアに勝負しています。映画やドラマで何度も映像化されているのでトリックをご存知の人も多いと思いますが、まだ見たことない人は是非本から先に入って下さい。クリスティやカーやクイーンなどの海外の古典に全くひけをとらない傑作だと思います。個人的には横溝正史の作品の中でもベスト5に入ると思っています。是非この謎解きにチャレンジしてみて下さい。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

山岡荘八 「小説太平洋戦争」

日本人にとって最後の戦争(今のところ)である太平洋戦争は、日本の歴史上の大きな転機となりましたが、国自体が崩壊の寸前まで行くほど多くの命と財産を失いました。死者は軍人がおよそ230万人、民間人がおよそ80万人です。わずか4~5年の間にこれだけの人命が失われています。我々の先祖は想像を絶する悲惨な時代を経験しているわけですが、では現代に生きる我々はそれについてどれだけ知っているでしょうか?真珠湾攻撃、東京大空襲、沖縄戦、原爆投下、それくらいは誰しも知るところでしょうが、なぜ国力が自分たちの10倍もある大国に宣戦布告しなければならなかったのか、そして陸軍と海軍はいかに戦ってそして負けたのか、終戦はどのような経緯で行われたのか、問われてみると漠然とした答えしかできないのではないでしょうか?戦争は遠い昔のおとぎ話ではありません。平成に生きる身にとってもある程度は知っておくべき身近な歴史です。そこでお勧めするのがこの作品です。山岡荘八が実に10年もの歳月をかけて完成させた大作です。山岡荘八歴史文庫で全9巻です。日ソ不可侵条約を結んで意気揚々と松岡洋右が帰国する昭和16年4月の時点から、東京裁判の後のA級戦犯の死刑、満州の人々のソ連軍からの悲惨な逃避行などの戦後の悲劇まで、時間をおって細かく描いてあります。主な作戦、戦闘の経緯、その前後の状況、全て理解できます。太平洋戦争の全体の流れを理解するには最適の作品です。是非これを読んで先祖の苦労と過ちを知り、それを今後の日本に生きる身として大きな教訓にして頂ければと思います。あれほどの経験をしながら、また戦争ができる国になるべく政府が徐々に準備を始めてしまったこの危険な時代にこそ、是非読んで頂きたいと思います。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

吉村昭 「戦艦武蔵」

2015年3月3日、マイクロソフトの共同創業者であるポール・アレン氏がフィリピン中部のシブヤン海で戦艦武蔵を発見したと発表し、その映像をYoutubeで公開しました。このニュースは世界中に驚愕をもって迎えられました。これまで何度か沈没した武蔵を探索する試みは行われましたが、いずれも発見には至っていませんでした。そして沈没後約70年にしてようやくその姿を見せたわけです。このニュースを聞いた時にえしぇ蔵は吉村昭の名作である「戦艦武蔵」を読んでいないことに気付き、すぐに買って読みました。おそらく戦艦武蔵を題材にした小説の中で一番詳細で一番面白いのではないでしょうか?本当に夢中で読みました。この作品は軍艦の戦記ものによくある”かく戦えり”的な物語ではありません。作品全体の3分の2以上は武蔵が出来上がるまでの経緯であって、戦列に加わって戦った記録は最後の3分の1にも満たないのでその辺はご注意下さい。そうなるのも無理はありません。実際に華々しく武蔵が戦ったのは、最後のシブヤン海での死闘ぐらいで、他には目立った戦績がないのです。武蔵と大和はとにかく巨大で、移動するのに大量の燃料を消費します。当時の日本はとにかく燃料に不足している状態でしたので、武蔵と大和はなるべく大人しくして燃料を節約し、ここぞという大一番で敵の艦隊を46センチ砲でなぎ倒すというのが与えられた任務でした。だから武蔵の戦う場面はつまり武蔵が死にいく場面になるわけです。この作品を読むといかに多くの人が苦心して作り上げたか、そしていかに多くの人が乗り込んで、戦って、そして死んでいったかがわかるので、読み終わってから再度Youtubeで海底の武蔵の映像を見ると、なんとも胸に迫るものがあります。シブヤン海に眠る武蔵の誕生から最後まで皆さんも是非読んで下さい。戦争の虚しさがまた違う角度から知ることができると思います。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

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