蔵書

福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

吉川英治 「宮本武蔵」

日本人なら知らぬ人はいない天下無双の宮本武蔵。その生涯で一度も負けたことがないということも皆さんご存知だと思います。最も高い水準にまで達した剣の達人という印象があるのではないでしょうか?そんな宮本武蔵ですが、果たして昔からずっと語り継がれてきた人なのでしょうか?確かにその足跡は江戸時代からしっかりと伝えられてはいますが、今のように剣の道でのスーパースターというイメージを確立したのは、実はこの吉川英治の作品がきっかけなのです。この作品によって宮本武蔵のイメージは強烈に日本人の中に印象付けられました。この作品は1935年8月から1939年の7月まで朝日新聞に連載されました。この連載された時期も人気に拍車をかけた一つの要因です。1937年から日中戦争が始まりますが、当時は国を救うために真剣勝負に勝つ強い男が求められた時期と言えます。そういう時期に登場したものですから諸手を上げて迎えられたというのも頷けます。まさに武蔵こそ理想の男という図式になるわけです。その後、戦争が終わっても日本人の中では宮本武蔵こそ理想の武士、理想の男というイメージは変わることなく現在まで続いています。つまりこの作品はそれほどの影響力を持っていたと言えるわけです。とにかく面白いの一言。一気に読み進みます。この痛快な物語を通して描かれる宮本武蔵の生き様には、やはり学べる部分がかなりあります。ここから何かを学ぶもよし、エンターテイメントとして読むもよし、是非皆さんもこの理想の武士の物語をお楽しみ下さい。

テーマ:読書感想文 - ジャンル:小説・文学

司馬遼太郎 「空海の風景」

司馬遼太郎の作品というのはとにかく面白いですよね。その面白さにはまって、次々に買ってきては本棚にずらりと並んだという経験がある人は少なくないと思います。その魅力はなんといっても歴史の空白部分を埋める空想と、息もつかせない物語の展開だと思います。えしぇ蔵もまたあの痛快無比な面白さを味わうために、読んでない作品を探しては買っています。今回のこの作品もそのノリで買いました。ところが、この「空海の風景」はちょっと違います。えしぇ蔵は主人公空海が真言宗を確立すべく歴史の一時代を縦横無尽に駆け巡るようなものを予想していましたが、さにあらず。これは司馬遼太郎が空海という人物に関して調査したその軌跡と、真の人物像にせまるまでの過程を描いています。いわばレポートのようなものです。とはいっても論文のような固いものではなく、随筆として書かれていますので決して読みにくいものではありません。小説のような空想部分は一切入らず、調査結果とそれに基づく推測によって構成されています。だからちょっと予想外なものを感じますが、いえいえこれはこれで実に面白いのです。空海、弘法大師という人物について多くの人が持っているであろうイメージは、仏教史における偉大な存在の一人という感じだと思いますが、これを読めば歴史の中でも群を抜いた偉大な人物であることを学べます。宗教界の巨人といわれる理由がよくわかりました。一人の人物の生き様として読んでも非常に面白いので、宗教に関心がない人も是非読んでみて下さい。やはり司馬遼太郎は読者を裏切りません。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

永井路子 「北条政子」

歴史小説の世界において女流作家とくればまずは永井路子が上げられます。日本の歴史を、女性を主人公にして女性の視点から描いた作品を数多く残しています。「美貌の女帝」では氷高皇女(元正女帝)を、「山霧」では毛利元就の妻のおかたを、「乱紋」では織田信長の妹のお市の娘(お茶々、お初、お江)を、「一豊の妻」では山内一豊の妻の見性院を、「朱なる十字架」では細川ガラシャを、「波のかたみ」では平清盛の妻の時子を描いています。「歴史をさわがせた女たち」という作品もあります。他にも女性の視点からの作品は多々ありますが、それらはあくまで歴史を動かす男性たちを支える女性の物語となっています。ところがこの作品は違います。北条政子は源頼朝の妻ですので物語の最初においては頼朝を支える女性として描かれていますが、頼朝亡きあとは明確に歴史の主役に躍り出ます。歴史を動かす女性として描かれています。幕政の実験を握って世を動かし尼将軍とまで言われたそのリーダーシップは歴史が証明しているように、北条政子は歴史の脇役としての女性ではなく、主役の女性であると言えます。だからその人物像も強烈な個性を放って力強く”歴史の主人公”として描かれています。しかもそれまでの北条政子像を永井路子なりの新説を駆使して覆し、新たなイメージを創り出している点も評価できます。ここまでの大物の女性を的確に描けるのは永井路子以外にいないのではないかと思います。是非ご一読下さい。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

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