蔵書

福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

五木寛之 「蒼ざめた馬を見よ」

福岡が生んだ大家、五木寛之がその名を世にしらしめた作品です。1967年第56回直木賞受賞作。この作品はとにかくストーリーが面白いので何も構える必要はありません。ちょっとしたサスペンス映画でも見に行った感覚で読んでみて下さい。エンターテイメント性にとんでハラハラドキドキ、どんなからくりがあるのだろうかと先が気になって止まらなくなります。主人公の新聞記者は冷戦中のソ連に行き、ある老作家が密かに書いた大作の原稿を託されます(この大作のタイトルが「蒼ざめた馬を見よ」です)。ソ連では出版が難しいので持ち帰って出版して自分の主張を世にひろめて欲しいと。そしてそれが出版されると世界中で大反響を呼びます。ですが何か裏がありそうな感じ……主人公がさせられた仕事は一体どういう意味があったのか……???この面白さはなるほど直木賞だなと納得できます。この「蒼ざめた馬を見よ」という表現には意味があります。これは聖書に出てくる表現です。「ヨハネの黙示録」の中に子羊が七つの封印を開封する場面がありますが、そこで4人の騎士が登場します。一つ目の封印を解いた時には白い馬に乗った支配を意味する騎士、二つ目では赤い馬に乗った戦争を意味する騎士、三つ目では黒い馬に乗った飢饉を意味する騎士、そして四つ目に登場するのが蒼ざめた馬に乗った死を意味する騎士です。「見よ、蒼ざめたる馬あり、これに乗る者の名を死といい……」という表現が出てきます。ここに由来しています。先に「ヨハネの黙示録」を読んでおくというのもいいかもしれません。よりその意味する部分を深くとらえることができると思います。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

島木健作 「癩」

ちょっとショッキングですが、恐ろしいほど心に深く残る傑作です。舞台は刑務所の中です。労働運動を行っていた主人公は逮捕され、舞台となる刑務所に収監されます。そして過酷な環境での過酷な生活が始まります。ただでさえつらい監獄の中で彼は結核を発病します。結核患者の囚人は病人ばかりの別の棟に移されます。初めてそこに移された時に、他の囚人から「ハイかライか?」と聞かれます。その棟は肺病か癩を患ったものが集まるところでした。彼の房の隣には癩の患者がいました。人として扱ってもらえない監獄の中で、癩によって崩れた顔面や身体の囚人たちがなんの希望もなくただ生きている現状を見せつけられて主人公は大きなショックを受けます。そしてそこに新しい癩病の囚人が送られてくるのですが、それは主人公の知人でした。その囚人は未来のない状況にありながら、それでも自らの信念を守って毅然と生きています。その強い姿に主人公は更なる衝撃を覚えます。しかし一方で主人公の病状は徐々に悪化していきます。島木健作は実際に1928年の3.15事件(社会主義的な活動を弾圧するために行われた全国一斉検挙。約1600人が検挙された)で逮捕され服役していますが、肺結核のために隔離病舎に入っています。おそらくその時の体験を参考にしていると思われます。ちょっと重いですが切実なメッセージが凝縮されており、”生きる”ということについて、本当に多くのことを学ぶことができる作品です。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

永井路子 「恋のうき世」

高校生の頃、古文の時間に「今昔物語」を習った人は多いと思います。あの「今は昔・・・」で始まるやつですね。あれは古文の読解の難しさは別として、ストーリーとしてはえしぇ蔵は結構面白く感じましたが皆さんはいかがでしたか?笑えたり、怖かったり、ちょっと色気もあったりして、いわゆる人間のありのままを描いたエンターテイメントでした。なんと1000以上の話が集められているそうで、日本最高の説話文学と言われています。その中のいくつかをヒントにして永井路子流に創作した作品群がこの「恋のうき世」です。他の作品もそうですが、永井路子は読みやすく書いてくれるのが特徴です。この作品も題材は中世ですが難しい表現は少なく、ユーモアたっぷりに書いてありますのでストレスなく読み進むことができます。えしぇ蔵は一日で読んでしまいました。七つの話がおさめてありますがどれも面白く、お色気もたっぷりでエンターテイメント性にあふれた読物です。これを読んでつくづく思いましたけど、人間ってのは今も昔も愚かでユーモラスな生き物であって、その本質は1000年という時間を経ても基本的には変わらないものなのかもしれませんね。永井路子も作品の冒頭の「はじめに」の中で、「今は昔」ではなく、「今も昔も」という感じで読んで欲しいと書いています。この作品のサブタイトルの「新今昔物語」の”今昔”とはつまりそういうことを意味しているわけですね。とにかく楽しめますから気軽に読んでみて下さい。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

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