蔵書

福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

竹山道雄 「ビルマの竪琴」

竹山道雄と言えば「ビルマの竪琴」、「ビルマの竪琴」と言えば竹山道雄ですが、他に作品はあるのでしょうか?実はこの人は小説を書くのは本業ではありませんので有名な作品はこれだけです。本業はドイツ文学者なのです。彼は多くの名作を翻訳して日本に紹介しています。中でも驚きなのは、スイスの作家ヨハンナ・シュピリの名作、「アルプスの少女ハイジ」です。あのハイジの翻訳者なんです。本業ではない小説において文学史に名を残していることからして、文学全般における非凡な才能を持っていたことは容易に想像できます。難解な単語や表現がない文章からすぐにわかると思いますが、これは実は童話なのです。もともと子ども雑誌「赤とんぼ」に1947年から1948年にかけて連載された作品で、反戦のメッセージを底辺においた物語になっています。設定に無理があるという批判もありますが、子ども向けの物語ですからあまり細かいところまで詮索する必要はないと思います。簡単にストーリーをご紹介。太平洋戦争中のビルマでのお話です。音楽好きな隊長に率いられたある隊は現地で終戦を迎え、全員捕虜になってしまいます。ところが終戦を知らずに戦い続ける隊もあり、水島上等兵は彼らの説得に赴きますがそのまま消息を断ってしまいます。みんなは心配しますが、ある日水島上等兵にそっくりの修行中のお坊さんが現れて・・・というお話で、映画にもなって有名なので結末はご存知でしょうが、是非原作を読んで頂きたいと思います。水島上等兵は無事なんでしょうか?無事ならなぜ戻らないのでしょうか?無事に日本に帰れるのでしょうか?この作品は、名作は常に心の糧となるという一つの例だと思います。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

司馬遼太郎 「竜馬がゆく」

えしぇ蔵が高校生の頃、普段本なんて読まない友人が夢中で読んでいたのがこの作品でした。「そんなに面白い作品なのか」と思いはしたものの、実際に読んだのは数年後でした。そして読んだ時にはあの高校時代の友人の夢中さがよくわかりました。こんなに面白い物語があるのかと何もかもほったらかしにして読みました。読んだ後に残ったのは坂本龍馬という人物の偉大さと、それを見事に描ききった司馬遼太郎のすごさでした。明治維新の前後には本当に偉大な人物がまとめて世に出て来たような印象を受けますが、中でも西郷隆盛と坂本龍馬は別格の存在だと思います。ただ、坂本龍馬の場合は明治政府誕生の前に若くして亡くなっていますし、維新の功労者として世間一般に知られるようになったのはかなり後のことです。彼を誰知らぬものない永遠の存在としたのは彼のことを書いた作家たちです。今まで多くの人が坂本龍馬の人間像を描いてきました。そして現代の我々が持つ坂本龍馬像を決定的に創り上げたのが司馬遼太郎と言えます。映画やドラマに登場する坂本龍馬はこの作品の中での彼をモデルにしている場合が多いようです。豪放磊落でプラス思考で先進的。大局で物事を判断することができ、義理堅く情にもろい。子どものように純粋であると同時に強靭な精神力を持つ。多くの人が彼に憧れ、彼を目標とするのもわかります。つまりは坂本龍馬もすごいけど、その人間性を作品にして多くの人に生きる勇気を与えた司馬遼太郎もすごいと言えると思います。この作品は背景が激動の幕末なので彼にも劣らない大人物が続々と登場しますし、ストーリーの展開も大きく、非常にスケールの大きな作品です。読み応えは抜群です。司馬遼太郎の作品の中では絶対に外せない名作です。もし、司馬遼太郎を読んだことないという人は是非この作品からどうぞ。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

芥川龍之介 「藪の中」

よく未解決事件などを表現するのに、”真相は藪の中”といいますが、あれはこの作品からきています。芥川龍之介の傑作「藪の中」は、一つの事実を、それに関係する複数の人間の口から語らせると各々のエゴが介在して少しづつ変化してしまうということをテーマにした、人間の心理の底の暗闇を見せるような非常に面白い作品です。短い話なのでここでストーリーを詳しく説明すると興をそぎますので簡単に。ある男の死体が発見され、真相究明のために関係者が証言します。男と争った若い盗人、男の妻、目撃者などが語る真相はどれも食い違っています。最後は霊能者を通して殺された男が証言します。さて、誰の証言が真実なのか?という内容です。ちょっと推理小説的要素も含んでいます。実はこの作品は『今昔物語集』巻二十九第二十三話を元にしています。古典を題材にして自分なりの物語に変えてしまうのは芥川龍之介の得意技です。そしてこういう複数の人物の証言で構成するという手法は、アメリカの作家アンブローズ・ビアスが「月明かりの道」という作品の中で使っています。当時アンブローズ・ビアスを日本に紹介したのは芥川龍之介なので、おそらくその影響を受けたのではないかと言われています。ちなみに黒澤明の有名な映画「羅生門」は、芥川龍之介の「羅生門」と「藪の中」を合体させたようなストーリーになっています。この作品の真相は読者の判断に任される形で終わりますので、多くの人がこれにチャレンジしました。これまでにたくさんの論文などが発表されています。是非皆さんもこの傑作を読んで、自分なりの結論を出してみて下さい。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

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