蔵書

福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

灰谷健次郎 「とんぼがえりで日がくれて」

えしぇ蔵は成人してからもずっと読み続けてる童話があります。それは宮沢賢治の作品とトーベ・ヤンソンのムーミンシリーズ、そして灰谷健次郎の作品です。これらは大人も読むべき童話だと思います。灰谷健次郎という人は少年の頃の感性を忘れずに成長し、大人になってそれを作品にしたような印象を受けます。大人にはもうわからない細やかな子どもの心理を見事に描いていて、読んでる側に懐かしい何かを思い出させてくれます。彼が描くところの子どもたちというのは現実の世界においてあまり見かけることはないかもしれません。特に今のように様々な情報が氾濫する世界においては非常に困難でしょう。子どもたちがまっすぐに育つというのはだんだん難しくなっています。日本は経済的に豊かにはなりましたが、心は貧相になっていく一方です。そんな時代に生まれてくる子どもたちというのは、あの戦後の荒廃した日本に生まれることと比べて果たして幸福なのだろうかと疑問に思うこともあります。人間というのは逆境に生まれるとそれを乗り越える強い力をつけることができ、振り返れば逆にそのことに感謝するということも往々にしてあります。逆に豊な時代に生まれたのに愛情に飢えている子どもたちも大勢います。どんな時代であろうとまっすぐに子どもを育てるのはその時代の大人の責務です。教育するということの大事さはどんな状況下でも永久にその重みを主張しています。ではどう育てればいいのか?どう接していけばいいのか?なにかその導きとなるものはないかということになると、まさに彼の作品がそれにあたると思います。彼が描く子どもはいわば理想の子ども像です。子どもにとっても大人にとっても、彼の作品の中には模範とすべきものがたくさんあると思います。年代を問わず是非読んで頂きたいと思います。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

芹沢光治良 「巴里に死す」

一体日本人の何割が芹沢光治良の名前を知っているでしょうか?日本人はこの偉大な作家を自分たちの国が生んだという名誉をほとんど認識していないのではないでしょうか?特に昨今の若年層にとっては聞いたことない作家というのが現状ではないかと思います。これはあまりにも悲しいことです。これを読んでいる皆さんの中にもご存知ない方もおられるでしょうからここでとくとご説明したいと思います。芹沢光治良は1896年に静岡に生まれます。東京帝国大学卒業後、農商務省に勤めますが辞めてフランスに渡り、ソルボンヌ(パリ)大学で学びますが、結核を煩ってしばらくスイスで静養します。(この頃の体験は後に作品に多く活用されています。)その後帰国し、小説を発表し始めますがすぐに認められて文壇に登場します。そしてここで紹介する「巴里に死す」は特に高い評価を受け、フランス語にも訳されますがヨーロッパでも非常に好評で、一躍世界にその名を轟かせます。作品は「命」、「運命」、「人生」などをテーマとして、人間という存在の深淵に触れるものが多く、深さと重みを感じさせます。やがて彼の評価はヨーロッパでは絶対的なものになり、ノーベル文学賞の候補にまで挙げられました。あのノーベル文学賞の大江健三郎が師と仰いだほどの人です。どうです?すごい人でしょ?世界中の人が彼の名を知っていて、どうして日本人があまり知らないか不思議でしょ?いい作品、いい作家はきちんと評価する民族でありたいものです。彼が世界で認められる一つの理由は、テーマが民族を超えて人間全体に共感できるものだからではないかと個人的には考えています。是非この代表作「巴里に死す」を読んで、日本の誇りである芹沢光治良という人を知って頂きたいです。

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吉川英治 「三国志」

三国志は中国三大奇書の一つで、恐らく世界中で最も面白い物語のトップを争う作品だと思います。皆さんも何らかの形でその内容に触れたことはあるでしょう。なにせ芝居、映画、ドラマ、漫画などで何度もとり上げられていますからね。小説において日本語訳、あるいはそれを基にした創作を発表した作家も数限りなくいます。えしぇ蔵も作家を変えて何度も読みましたが、断然一番面白いのは吉川英治でした。文庫で全8巻と結構長いのにあっという間に読み終えて、あまりに面白かったので2回読んでしまいました。登場人物が多くいろんなドラマが絡みあう長い長いストーリーを面白く読ませるのは作家の腕以外のなにものでもありません。吉川英治の場合は無駄を省いて読みやすくしてあるので読む側をぐっとひきつけるのではないかと思います。水滸伝や西遊記でもそうですが原書の直訳はかなり読むのに苦労します。一度原書の直訳をぱらぱらっと見てみるといかに吉川英治が読みやすくアレンジしてくれているかがよくわかります。そうかといって勝手にエピソードを加えたりして独自の三国志にしているわけではありません。あくまで原書に忠実に、かつ面白く書いています。えしぇ蔵思うに三国志は単なる歴史娯楽小説ではありません。三国時代の中国大陸を舞台にしてはいますが、そこで描かれているのは結局は様々な人間の生き様であり、人生の教訓であると思います。玄徳、関羽、張飛、趙雲、曹操、孫権、孔明、呂布、陸遜、・・・英雄豪傑たちはそれぞれが持つ信条に従って一時代を駆け抜けます。その姿の中に何かを見つけて欲しい、何かを感じて欲しいと言っているような気がするのはえしぇ蔵だけでしょうか?これだけで十分に一冊の人生指南本になると思うんですけどいかがでしょう?

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海音寺潮五郎 「天と地と」

この「蔵書」で紹介した作家は偉大な人ばかりですが、この海音寺潮五郎もその例外ではありません。その残した功績の大きさは計り知れません。この人の最も大きな功績は、昭和の時代において”史伝文学”を復興させたことです。史伝文学とは歴史の記録としての文学です。一般に歴史小説と言われるものは面白くするためにある程度フィクションが混ざっているものですが、史伝文学は史実のみで構成されており、歴史を学ぶ上でその参考に成り得るものです。このジャンルの作品は明治の頃には盛んでしたが後に衰退します。そのことに危惧を覚えた彼はその作品において史伝文学の復興を目指し、後に続く作家も出て来て見事にその目標を達成します。歴史ものが好きな方なら絶対に忘れてはいけない存在です。「蔵書」で紹介すべき彼の作品は枚挙に暇がありませんが、今回は「天と地と」を選びました。この作品はドラマにも映画にもなったのでタイトルはご存知の人も多いでしょう。”越後の虎”上杉謙信の生涯を雄大なスケールで描いてます。とにかくすごいのは徹底した歴史考証です。歴史ものを読んでて、え?その時代にそれはなかったんじゃない?みたいに時代考証の甘さを発見すると非常に冷めてしまいます。猫も杓子も作家になる昨今ではそういうことが時々ありますが、この人に関してはただただ脱帽するのみです。書き始めるまでの調査の大変さがしのばれます。だからこそ作品全体にも説得力がでて面白くなるのだと思います。兼信入道の鮮やかな戦ぶりを確かな歴史考証で楽しんで下さい。

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