蔵書

福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

中島敦 「山月記」

一般によく知られている有名な作家の中には、自らが日本文学史に不動の地位を築き、名は日本中に広がり、作品は多くの人に愛されているということを知ることなくこの世を去っていった人がかなりいます。中島敦もその一人で、33歳の頃に「文学界」に「古譚」、「光と風と夢」を発表して大いに注目を集め、「光と風と夢」は芥川賞候補にまでなるのですが、なんとその年の12月に気管支喘息で亡くなります。まさに一瞬だけまぶしく光って去っていった流れ星のような人です。しかし、作家は亡くなっても作品たちはそこから活動を始めます。多くの人に支持され、遺作は次々に世に出て行きます。まるで遺児たちが亡き父の分まで頑張っているかのようです。全集も編まれ、いつしかしっかりと日本文学史に足跡を残していました。そしてここで紹介する「山月記」が国語の教科書でとりあげられたことにより、子どもから大人まで知らぬ人はいない作家となったわけです。作家は死んでも作品は生き続けるのですよね。その典型的な例だと思います。彼の作品はいくつかのパターンがありますが、この「山月記」や「李陵」などはリズム感のある非常に美しい漢文調で書かれています。美術館で優れた絵画を眺めるように、えしぇ蔵は彼の文章を眺めて楽しんでいます。ほれぼれとしますね。この作品をただ単なる怪奇趣味と片付けては大間違いです。主人公の李徴が虎になって、人間に戻れる数時間に世を儚む・・・そういうストーリーは表だけの装飾でありまして、その奥でもっと大事なことを伝えようとしているのです。物語全体が一種の比喩なのです。李徴は何を意味するか?虎は?戸外で読んだ「だれか」は?是非その本当の意味を探ってみて下さい。もうご存知の作品でしょうけど、今読むとまた違ったものが見えてくると思いますよ。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

池波正太郎 「真田太平記」

池波正太郎の作品の特徴はなんといっても「文句なしに面白い」ということです。エンターテイメント性が豊かで、読み手の心理を完全にとらえて喜ばせたり、悲しませたり、ハラハラさせたり、爽快にさせたりします。彼の手のひらの上でコロコロと転がされているかのようです。どういう展開なら読み手が楽しめるのか、どういう筋書きなら喜んでもらえるのか?そのへんの奥義を知り尽くした上で余裕をもって書いているという印象を受けます。揺らぎのない大きな力を感じます。一体どんな経験が彼をそこまでにしたのでしょうか?若い頃から歌舞伎や演劇が好きだったことが高じて、彼は劇作家として歩み始めます。その後、師匠である長谷川伸のすすめもあって小説へと移行していくわけですが、彼の劇作家としての経験が、「面白いものを書く」ということの奥義を体得させたのではないかと思います。お客さんを喜ばせるというのが、読者を喜ばせるということに変わっていったのではないかと勝手に推測しています。そんな彼の作品の魅力を楽しむにはあまりに多くの作品があってどれを紹介していいか迷いますが、是非これだけは外して欲しくないと思うのがこの「真田太平記」です。新潮社から出ているのは全12巻でちょっと長いですが、それを全く感じさせないほど夢中になれるのは間違いありません。大きな権力に屈しない小さな真田家の男たちの生き様は痛快そのものです。これを読めばきっとあなたも真田家のファンになります。「文句なしに面白い」池波正太郎の世界をとくとお楽しみ下さい。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

司馬遼太郎 「梟の城」

ある知り合いに「司馬遼太郎の『梟の城』はかなり面白いよ」と勧められて読んだのはいつだったでしょうか?確か大学卒業して社会人になる頃だったでしょうか?それが司馬遼太郎の作品との初めての出会いでした。この「梟の城」にはすっかりはまりまして、それからしばらくは怒涛のごとく司馬遼太郎作品を買って読みまくりました。今では本棚を2列くらい占領しています。全作品の8割くらいは読んだと思います。えしぇ蔵のようなケースは珍しいのかと思いきや、結構同じように司馬遼太郎にはまって集めまくるという人は多いようです。それだけ彼の作品は人を惹きつけるということでしょうね。この「梟の城」は映画化もされましたが、できれば映像化されたものを見るより原作を読んで欲しいです。そしてあなたなりの司馬遼太郎ワールドを頭に思い描いて、楽しんで頂きたいと思います。主人公の忍者は秀吉の首をとるために城へ侵入します。そしていざ秀吉の枕元に来て暗殺が完了するその刹那に彼は意外な行動をとります。その意外な行動とは?あなたはいつのまにか戦国の世にいて主人公と一緒に胸のすくような冒険をしていますよ。とにかく文句なしの面白さです。1960年に第42回直木賞を受賞した作品で、彼の名を広めた出世作です。この1冊を読めば必ず次の「司馬遼太郎」が読みたくなって、そうして連鎖反応で本棚はいつのまにか「司馬遼太郎」で埋まってる・・・あなたもきっとそうなります。

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小泉八雲 「耳無芳一の話」

小泉八雲という人は恐らく現代の多くの日本人の想像を上回るほどのすごい人だったのではないかと個人的には思っています。だってもともとはギリシャの人ですからね。それが日本で文学者として歴史に名を残すほどの人になるわけですが、実はそれ以前にもフランス、イギリス、アメリカなどで様々な経験をしており、日本に来たのは実は最後の冒険なんです。彼は日本において英語教師として活躍を始めますが、最終的には東京帝国大学文科の英語教師にまでなります。しかも周囲の評価も非常に高く、辞める時は多くの人に惜しまれたそうです。日本の歴史、伝統、文学を研究し、日本という国を深く愛した人でした。死後はなんと従四位という官位まで贈られています。全くすごいとしか言いようがありません。そんな彼が残したこの作品は恐らく日本人では知らない人はいないのでは?と思われるほど有名です。子どもの頃に読んだという人が多いのではないでしょうか?彼は民間伝承の日本の古い物語を研究していましたが、この話は彼の奥さん(小泉節子)が話して聞かせ、それを作品にしたとのことです。目の見えない琵琶法師が平家の怨霊の前で平家物語を奏でるという話で、今読んでも背筋がぞくっとします。子ども向けの昔話の定番になりましたが、原作だとさらに恐怖感があおられますよ。この作品は彼の日本研究の成果の一つでもあります。是非今一度原作で読み直してみて下さい。

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