蔵書

福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

宮尾登美子 「櫂」

宮尾登美子は非常に数奇で波乱万丈な人生を生き抜いてきた苦労人ですから、その人生に関すること、あるいは家族やまわりの人間に関することで小説のネタが山ほどあるわけです。彼女が自分以外で最もネタにしたのが父親のことです。この作品の中では、岩伍として登場します。彼女の父親は芸妓・娼妓紹介業という商売をしていました。これは芸妓・娼妓になることを希望する女性と料亭や遊郭との仲立ちをする仕事です。岩伍はこの仕事で成功し、土佐では顔役になります。宮尾登美子はそういう家庭に生まれ育ってきましたので、いろんなドラマを目撃してきたわけです。この「櫂」に限らずその生い立ちをベースにして書かれた作品は、「春燈」、「朱夏」、「寒椿」、「岩伍覚え書」、「陽暉楼」・・・とたくさんあります。小説ネタに苦労しない人生だったわけですね。ただし作品ごとに視点はかわります。この作品の場合は岩伍の妻の喜和を中心にして物語が進んでいきます。つまり宮尾登美子の母親ですね。喜和は渡世人の岩伍に惚れて嫁入りします。岩伍は結婚後、芸妓・娼妓紹介業を始め、家のことは一切喜和に任せてその仕事に夢中になります。喜和は家を守って粉骨砕身岩伍に尽くしますが、岩伍の仕事が女性の涙と縁の切れないものであることが彼女の中で常に納得のできない部分としてあり、そのことはやがて岩伍との不和の原因にもなり、喜和の人生には徐々に影がさし始めます・・・。強い信念を持って生き、苦難に黙々と対処する一人の女性の人生を見事に描いた作品です。彼女の特徴である文章の美しさは言うに及ばず、物語としても面白く、かなりの長編ですが長さは感じさせません。彼女の出世作となった傑作であり、いわゆる宮尾登美子ワールドの入口でもあります。どうぞここからはまって下さい。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

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