蔵書

福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

横溝正史 「八つ墓村」

古今東西、様々な推理作家が登場して数々の名作を残していますが、それらのどんな要素が読者を惹きつけているか?となるといくつかのパターンに分類されます。トリックが優れているから、プロットが完璧だから、ストーリーが面白いから、恐怖感、スピード感、爽快感があるから、謎解きが明快だから、文章が美しく文学的だから……などがあげられます。では横溝正史の作品の場合はどうでしょう?確かにトリックも素晴らしいですし、展開も劇的で面白いです。そういった要素で多くの支持を得ているということも事実でしょう。でもえしぇ蔵はそれらは副次的な要素に過ぎないと思っています。では何が一番の魅力かというと、あの雰囲気です。横溝正史が造り上げたあの世界です。凄惨な殺人、村に伝わる伝説、ユーモラスな金田一耕介、良心的な脇役、予想外の展開、戦後から昭和40年代までの古き日本の情景、山奥の村、絶海の孤島、洞窟、鍾乳洞、神社、日本家屋、家柄血筋、悲しみを残すクライマックス、そして”罪を憎んで人を憎まず”……これらによって作り上げられるあの”横溝正史ワールド”にまた浸りたいから、読者は次々に作品を手にするのだと思います。これこそ横溝正史の成功の最大の要因ではないかと個人的には思っています。その最たる例がこの作品です。これこそ”横溝正史ワールド”を絶対的なものにした立役者ではないかと思います。戦国時代の悲惨な伝説を持つ村で大正時代に虐殺事件が起きます。その20数年後に起こる連続殺人事件に金田一耕介が挑みます。完璧な構成でエンターテイメント小説としては傑作と言えると思います。まだ読んでいない方は是非この雰囲気に浸って下さい。そして”横溝正史ワールド”にはまって下さい。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

横溝正史 「獄門島」

推理小説好きな方は必ず、そうでない人も一度は経験したことがあると思うのが、トリックにがっかりすることです。推理小説というのはいろんな手がかりを提供する段階において不可能と思われる状況を作っておいて、さて、どうすればこれが可能になるのか?と読者に考えさせます。その考えることが楽しいわけで、自分なりの答えを用意した段階で最後の種明かしを読んで、そこで、やっぱりそうだった!とか、なるほどその手があったか!と思えてまた楽しいわけです。ところが非常に多くの作品で、え?そういうトリック?そんなの不可能じゃないの?そんなのあまりにバカげてない?と、種明かしにがっかりすることがあります。現代には山ほど推理小説が世に出回っていますから、時代を経るごとにがっかりさせられない作品に出会う確率がどんどん減っていくのは避けられないことです。中にはトリックではなく雰囲気が好きだからとか、単純に作家が好きだからという理由で選ぶ人もいますのでそういう人は問題ないと思いますが、トリックで唸りたいと思う人は是非、この作品のような傑作をお勧めします。なるほど!その方法なら可能だ!と誰しも納得されると思います。作品の最初から注意してじっくり読めば、確かに答えに行きつけるようになっていますのでフェアに勝負しています。映画やドラマで何度も映像化されているのでトリックをご存知の人も多いと思いますが、まだ見たことない人は是非本から先に入って下さい。クリスティやカーやクイーンなどの海外の古典に全くひけをとらない傑作だと思います。個人的には横溝正史の作品の中でもベスト5に入ると思っています。是非この謎解きにチャレンジしてみて下さい。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

横溝正史 「本陣殺人事件」

横溝正史という人がかつて存在したことは、日本の推理小説界にとっては大きな誇りです。まさに日本の推理小説を新化させるために生まれてきたと言っても過言ではないと思います。ところがそんな彼でも肺結核を患ったり、戦争の影響で作家活動を規制されたりで、自由に推理小説を書けない頃がありました。それが戦後になってついに開放され、自分の時代が来たとばかりに作家活動を再開します。来るべき日に備えて、不遇の時代に練りに練っていた構想を作品にして発表されたのがこの「本陣殺人事件」です。ご存知、頭ぼさぼさの金田一耕介が難事件を解決する傑作中の傑作です。金田一耕介が初登場する作品でもあります。この作品は日本の推理小説の歴史上、非常に重要な位置を占めています。何といっても日本初の本格推理小説でありますし、非常に困難と言われた日本家屋での密室トリックに挑戦しています。ストーリーも構成も全く文句のつけようがない質の高さで、それをつづる文章がまた素晴らしく、まさに完璧と言ってもいい作品です。推理小説といえばアガサ・クリスティやエラリー・クィーン、ディクスン・カー、ヴァン・ダインなどの海外の大御所が有名ですが、いえいえ日本にも世界に誇れる人がいます。それが江戸川乱歩であり、横溝正史です。二人ともトリックに納得がいきますしストーリーも面白く構成も巧みです。この作品のトリックは本当に素晴らしく、一種の感動を覚えました。横溝正史に敬意を表したいです。家の中に刀で斬られた死体が二つ。でも刀は庭に降り積もった雪の上に突き刺さっています。まわりに足跡は全くありません。さて、この二人に一体何が起こったのでしょうか?推理小説はトリックに無理があると読後にがっかりしますが、この作品に関してはその心配は無用です。じっくりと読んで、真相の解明にチャレンジしてみて下さい。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

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