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福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

樋口一葉 「たけくらべ」

樋口一葉の名前は文学の趣味のあるなしに関係なく、恐らくほとんどの日本人が知っている女流作家ではないでしょうか。なにしろお札にまでなっていますからその知名度は揺るぎないものだと言えます。ところがそんな彼女の人生を調べてみると驚くべき事実に直面します。彼女は明治5年生まれで、亡くなったのが明治29年です。なんと24歳6ヶ月という短い時間しかこの世に存在しませんでした。それなのにいくつもの傑作を世に残しています。まず20代前半でこの「たけくらべ」や「にごりえ」「十三夜」などの絶賛されるべき作品が書けたというその能力に驚嘆します。恐ろしいほどの才能を有していたことがわかります。それに加えてこれらの秀作は、ほんのわずかな期間に全て発表されていることにも驚きます。「大つごもり」が書かれたのが明治27年12月、「たけくらべ」が明治28年1月から連載、「ゆく雲」が明治28年5月、「うつせみ」が8月、「にごりえ」が9月、「十三夜」が12月、「裏紫」が明治29年2月に発表されています。この14ヶ月に渡る期間に彼女はその才能を思う存分に発揮します。圧倒的に素晴しい作品群が次々に生まれたこの期間は、「奇跡の14ヶ月」と呼ばれています。まさに彗星のごとく文壇を駆け抜けて行った感があります。そしてその後に続く多くの女流作家たちの尊崇の的となるわけです。この作品は遊女の姉を持つ少女と僧侶になる定めの青年との切ない恋物語ですが、完璧な文章によって少女の内面を見事に描写しています。読みながら頭の中には情景がありありと浮かび上がり、心の奥底にしみじみと残る感動はその時だけで消えるものではなく、おそらくその後の人生で何度も思い返すほどのものになるでしょう。日本の文学の素晴しさを凝縮したともいえる稀代の名作です。まだ読んでいない方は是非。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

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