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福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

長塚節 「土」

「節」は「たかし」と読みます。この人の生涯は35年という短いものでしたが、この作品によって永遠に文学史上でその存在を主張する作家となりました。あの夏目漱石がその才能を認めて世に紹介したというほどの人で、長命だったならばおそらく数々の名作を残したことでしょうが、天才ほど早世するというのはいつの時代、どの分野においてもお約束です。この作品はその2つの要素によって十分に長塚節という作家を説明しきっています。長塚節は正岡子規の門下にいて、「写生」の概念を学んでおり、この作品中でそれが遺憾なく発揮されています。明治における極貧の百姓一家の生活を自然の四季折々の変化とあわせて淡々と描いており、風景描写の素晴らしさなどは群を抜いています。見たまま、感じたままを書くということはつまりこういうことだと教えてくれているかのようです。これが一つの要素。もう一つはその「写生」によって、農民たちの苦しい生活を浮き彫りにして世に訴えることに成功していることです。本人は意識していたかどうかはわかりませんが、この作品は日本初の農民文学と言われています。農村の実態を正岡子規譲りの技法で広く世に伝えたことは彼とこの作品を文学史上の不動の存在にしたのです。ただ、作品の内容としてはこれといってストーリーに大きな展開があるわけでもなくペースも遅いので読んでいて疲れるかもしれませんが、文学的にもテーマ的にも日本人として大いに学ぶところがあるので是非頑張って読んで頂きたいと思います。ここに描かれている生活の様子はかつての貧しい日本の姿であって、裕福な現代の我々には想像もつかないひどい世界です。こういう時代があったこと、またこういう時代を経て今の日本があることを一度でいいから認識して頂けたら嬉しいです。病弱で早世した彼にとって唯一の長編小説ですが、非常に価値ある一品を残して逝ったわけですから、彼としても本望だったのではないでしょうか?

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

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