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福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

藤原てい 「流れる星は生きている」

先の戦争は様々な国に大変な悲劇を及ぼしました。日本は負けて、悔しさを噛み締めた人は多かったと思いますが、一方で生きる喜びを噛み締めた人も多かったのではないかと思います。やっと開放されたと思った人も多かったでしょう。ところがこの戦争が終わった瞬間から地獄が始まった日本人もかなりの数にのぼることを今の平和な時代に生きる私たちは忘れてはいけません。その明暗を分けたのは、戦争が終わった時にどこにいたかということです。夢を抱いて大陸に渡っていた一般人は戦争の終結から本当の地獄が始まりました。満州、中国、朝鮮にいた人たちはいわば敵中に取り残された形になりました。そこから決死の脱出が始まるわけですが、故国への道はあまりに遠すぎました。彼らの日本への長い道のりは多くの悲劇と死者なくして語れません。ソ連や中国の兵隊だけでなく、一般人も暴徒となって襲ってくるというのにこちらは武装解除されてなす術もありません。人としてただ生きるための最低のラインまで落とされることになります。それらの悲劇の多くは当事者の死によって多く闇に葬られましたので、無事に日本に生還した人の体験記によってしか知ることができません。そこでえしぇ蔵がお勧めするのがこの藤原ていの「流れる星は生きている」です。藤原ていは山岳小説で有名な新田次郎の奥さんで、数学者の藤原正彦の母です。彼女とその家族の壮絶な脱出劇には圧倒されます。人間は追い詰められるとここまで非人間的にもなれるし、また強くもなれるということを思い知らされます。そこにはただ生きるためにのみ必死になる人々の姿が赤裸々に描かれています。実体験から書かれたものというのはやはり迫力が違います。今を生きる私たちはこの作品を読んで、こういった生死の境で戦った人々の強さのおかげで今の日本があるのだということに感謝すべきだと思います。絶対に後世の日本人に伝えるべき傑作です。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

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