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福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

江戸川乱歩 「お勢登場」

江戸川乱歩の作品をほぼ全て読みましたが、一つ確かなことが言えると思います。それは長編よりも短編の方が断然素晴らしいということです。長編は推理ものを読むというよりエンターテイメント系のものを読む心構えなら十分楽しめると思いますが、いわゆる海外の本格推理のようなものを期待しているとかなりがっかりします。なにせ推理小説なのに全体の構成を決めないまま連載を始めるという今では考えられないようなことをしていたので、途中で方向性がずれたり、矛盾がでてきたり、中途半端な終わり方をしたりと結構がたがたのものがあります。中には非常に優れた長編もありますが、それは海外の作品の翻案だったりします。だから長編を読む時はあくまでエンターテイメントとして読むべきだと思います。ところが一方で短編は非常に素晴らしいものが多いのです。今回ご紹介するこの「お勢登場」は読み終わった時に唸りました。これはすごいと。全体のストーリーとしてはいたって単純なんですが、最後に待ち受けるまさかの展開には驚きます。お勢というのがどうしようもない女性で、旦那がありながら書生と不倫しています。旦那はそれを知りつつなかなか離婚を切り出せずに悩んでいます。ある日、お勢が男と会うために留守している間に、子どもたちと家の中でかくれんぼをして遊びます。旦那は長持ちの中に隠れますが、ふたを閉める時に外側の鍵がかかってしまって出られなくなります。空気穴もない長持ちの中でだんだん息苦しくなった旦那は必死に叫んで助けを呼びますが、子どもたちはかくれんぼに飽きて外に行ってしまいます。家の中には誰もいません。そしてもうだめだと思った時にお勢が帰って来て、旦那の声に気付きます。危機一髪助かったと思った旦那ですが、そこでお勢が驚きの行動に出ます。偶然に生まれた完全犯罪の結末はどうなるのか?短いですが非常に面白いので是非読んでみて下さい。こういうところに江戸川乱歩の本当の実力を見ることができると思います。

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江戸川乱歩 「黄金仮面」

江戸川乱歩の代表作的な位置付けにある作品です。何度かドラマ化されたのでご存知の方も多いでしょう。この作品は江戸川乱歩の推理小説の形式を象徴していると言えると思います。江戸川乱歩の作品の場合、例えばアガサ・クリスティやエラリー・クィーン、ヴァン・ダインなどの作品のように、読者が途中で手を止めて、「どういうトリックなんだろう?犯人は誰だろう?」と真剣に考えるタイプのものではありません。それよりも冒険的な要素がメインになるいわばモーリス・ルブランの「ルパン」的なタイプのものです。場面は目まぐるしく変わり、ストーリーはアップテンポに展開していきます。読者を退屈させず、一気に読ませる面白さを最も重要な要素としています。その反面、荒唐無稽なトリックが見られたり、犯人が途中でわかってしまうというような粗い部分はありますが、本来がエンターテイメント性を追求しているわけですから、深く考えずに楽しめばいいと思います。また、それこそが江戸川乱歩の作品の魅力の一つだと思います。この作品も娯楽性がメインなので犯人を言ってしまいますが、なんとアルセーヌ・ルパンなんですよね。もうそこから大胆な設定ですよね。ルパンを追う主人公はご存知明智小五郎です。この2人の対決をが見ものです。相手の裏をかく知恵比べが本当に面白いです。(ちなみにルパンに魅せられて、その相棒になってしまうお金持ちの令嬢の名前が不二子といいます。もしかしてルパン3世に登場する不二子の名前はここからとられたのでは?と勝手に推測しています。)さて、日本の名探偵とフランスの怪盗の対決はどちらが勝利するのでしょうか?読み始めたら止まりませんので、ゆっくり時間のある時にどうぞ。

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江戸川乱歩 「二銭銅貨」

推理小説が好きな人なら敬意を抱かずにはいられないのが江戸川乱歩です。日本の推理小説の黎明期を支えた人です。本格もの、通俗もの、どちらも多くの傑作を残しています。海外の名作推理小説も多く日本に紹介していますし、推理小説に関する評論も数多く残しています。ただ推理小説を書きたくて書いたというだけの人ではなく、日本に推理小説を根付かせるためにその生涯を捧げたと言ってもいいほどの熱心な活動をした人です。そのおかげで今や日本において推理小説という分野は文学において欠かせない一ジャンルとなりました。彼の影響を受けて多くの推理小説作家も登場しました。まさにその貢献度は計り知れません。そういった背景を理解した上でこの作品を読んで頂けると非常に興味深いものがあると思います。なぜならこの作品は彼のデビュー作だからです。江戸川乱歩は大正12年に「新青年」にこの作品を発表してデビューします。読んで頂ければわかりますが、駆け出しの頃にすでにこのクオリティですから驚きます。まだ日本では推理小説草創期に登場したこの傑作は、暗号解読をテーマにしています。これが実に面白いです。ある会社から大金が盗まれて、犯人は逮捕されますが肝心のお金の行方がわからない。犯人も白状しないし、どこを探しても見つからない。このことを新聞で読んだ青年二人がなんとかその在り処を探ろうと知恵を絞ります。そこで問題になるのが「南無阿弥・・・」とへんてこりんな呪文みたいなものが書かれた紙片です。これは暗号化された通信文ではないかということで解読を試みるわけです。これがなかなかに手が込んだからくりで、読み手を夢中にします。基本的にはシャーロック・ホームズが登場するコナン・ドイルの「踊る人形」やエドガー・アラン・ポーの「黄金虫」と似たタイプの暗号です。果たして彼らは解読できるのか?最後にはどんでん返しも待っています。本当に楽しませてくれる作品です。偉大なる大御所のデビュー作を是非ご堪能下さい。

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江戸川乱歩 「D坂の殺人事件」

小学校の頃に明智小五郎と少年探偵団の冒険譚を夢中で読んだ記憶がありませんか?えしぇ蔵の小学生時代には子ども向けにアレンジされた江戸川乱歩の推理小説の全集がよく読まれていました。怪人二十面相などの悪役と知恵比べをする明智小五郎と少年探偵団の活躍に心躍らせたものでした。えしぇ蔵の場合、たまたま町の図書館で見つけて一冊読んだのがきっかけで、それから図書館にあった全集を一冊ずつ借りて読破しました。中学に入って以後は子ども向けではない本来の江戸川乱歩の作品を読んで、これまた興奮しながら読み漁りました。思えば江戸川乱歩の作品とは長いつきあいです。江戸川乱歩以前にも日本には推理小説(当時は探偵小説と呼ばれていました。推理小説と呼ばれるようになったのは松本清張以後です)はありましたが、世間一般にそのジャンルが認識され、今のように文学の大きな一部を占めるに至ったのは江戸川乱歩の功績と言っても過言ではありません。そんな推理小説界の大御所の最初の作品は「二銭銅貨」ですが、あの明智小五郎が初めて登場したのがこの「D坂の殺人事件」です。もっともこの段階ではまだ明智小五郎は探偵を本業とはしていません。素人探偵として事件を解決します。内容としては密室トリックの一種ですが、事件の一番のポイントとなるのは犯人と被害者の間の隠れた性癖です。いわゆる異常性愛が引き起こした事件ということになっています。江戸川乱歩の作品はこういう官能的な部分が多いのも特徴です。怪奇性、官能性などを推理小説に盛り込んで、その幅を広めたことは彼の功績の中でも特に評価すべき点です。この作品で彼の魅力を知って頂いて、是非その膨大な作品群に突入していって頂きたいと思います。

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