蔵書

福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

椎名麟三 「深夜の酒宴」

一般に椎名麟三といえばキリスト教作家と認識されていますが、それは彼の作家人生における後期の顔であって、初期の頃はそうではありません。彼は様々な職業を経験した上で共産党に入党しますが、昭和6年に逮捕・投獄されます。その時に獄中で読んだニーチェが彼の人生を大きく方向転換します。彼は転向し、釈放された後は文学への道をひた走ります。この頃書いていたのはいわゆる実存主義の観点から書かれた暗くて重い作品でした。「深夜の酒宴」は彼の名を一挙にひろめた出世作ですが、この作品がまさにそれにあたります。では実存主義とはなんでしょう?例えばこういう表現をよくしますね。「Aさんの人間性には問題がある」この言葉をそのまま受け取るなら、まず人間性というなんらかの基準があって、それに照らし合わせるとAさんはあまり評価できないということになります。実存主義というのはこれと全く反対の考え方です。まずはAさんという存在があり、その人の行ないがよくないという事実があります。それを後から人間性という言葉を持ち出してAさんを評価しているわけであり、初めから人間性というものが存在するわけではないというのが実存主義です。現実問題が先でしょ?というわけです。この考え方が戦後の荒廃しきった人々の心に共感を生んで彼は一目置かれる存在になります。この実存主義の考え方にも頷ける部分はありますが、そうなると希望も理想もない世の中になるわけで必然的に心の廃墟を生み出します。ここにおいて椎名麟三も深く苦しみます。そんな彼に救いの手を差し伸べたのがキリスト教です。ついに解決策を見出した彼はそこからまっしぐらにキリスト教作家としてひた走るわけです。いわばこの作品は彼の苦悩の出発点です。椎名麟三の世界に入るならどうぞこの作品から読んで頂きたいと思います。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

 | HOME | 

FC2Ad

カテゴリー

最近の記事

ブログ内検索

リンク

このブログをリンクに追加する

プロフィール

esezo

Author:esezo
FC2ブログへようこそ!

QRコード

QRコード

RSSフィード