蔵書

福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

山本有三 「真実一路」

誰しも生きていれば同じ悩みに直面することがあると思います。人生とはなんなのか?自分はこのままでいいのか?そういう疑問にぶつかってふと歩みを止めて深く悩んだ経験は、これを読んでいる皆さんにもあることでしょう。そういう時には家族や友人、恩師の助言というのは非常にありがたいものです。人の言葉のあたたかさを知るいい機会といえるでしょう。一方で人の言葉に匹敵するほど大きな励みになる本があることも事実です。その代表的存在と言ってもいいのが山本有三の作品です。この「真実一路」は壁にぶつかっている人にとっては暖かい励みになり、ありがたい参考になることでしょう。この作品では、自分の本当の生き方を貫こうとした時に果たしてその先に幸福があるのか?周囲の人間に影響ないのか?真実一路に生きて本当にいいのか?そういうことを考えさせられます。山本有三の作品はこれに限らず、”人生”という壮大で不可解なテーマに取り組んだものが多いので、まさに人生の参考書と言えます。どの作品でも主人公はまっすぐに生きようとするけど、いろんな困難にぶつかって苦労します。それでもくじけずに力強く生きていくというパターンが多いです。よくこんな深いテーマで作品が書けるものだと尊敬してしまいます。世代を選ばず多くの人に読んでもらうことを前提としているかどうかは知りませんが、非常に読みやすいのも特徴です。ちなみにこの「真実一路」という言葉は、北原白秋の詩「巡礼」の中からとられています。以下にその一節をご紹介します。

真実、諦め、ただひとり、
真実一路の旅をゆく。
真実一路の旅なれど、
真実、鈴ふり、思い出す。

山本有三は最初にこのタイトルを思いついた時に、確か北原白秋の詩に同じ言葉があったことを思い出して、それから北原白秋の許可を得て冒頭部分に「巡礼」の一節を入れる許可を得たそうです。人間、真実一路に生きるのは報われるためではありません。人間としてそうすべきであるからです。つらい道のりとなろうとも、真実一路に生きるべきなのです。この作品から学べることは非常に多いと思います。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

山本有三 「路傍の石」

小説には様々なタイプがありますが、皆さん”教養小説”というものをご存知でしょうか?これはドイツにおいて確立されたスタイルで、主人公が逆境をものともせず様々な経験をしながら成長し、自己形成していく様子を描いていくというものです。ゲーテの「ヴィルヘルム・マイスターの徒弟時代」や、「ヴィルヘルム・マイスターの遍歴時代」がそのはしりと言われています。実在の人物をモデルにしたサクセス・ストーリーなどで今ではよく見かけるスタイルです。日本で言えばこの山本有三の「路傍の石」がその典型的な例です。山本有三は東大でドイツ文学を専攻しており、その影響を強く受けているようです。「路傍の石」はドイツで生まれたこの小説スタイルを参考にして書かれとみて間違いありません。山本有三の小説は、強く生きようとする人間への応援であり、挫折しそうな人への励ましです。人間を、人生を、命を肯定しよりよい人間形成を目的とした作品が多いので、このスタイルがまさにうまくはまっています。この作品の主人公、愛川吾一は没落士族の息子で貧乏な暮らしをしていますが成績優秀です。非常に将来を期待される身でありながら、貧乏は進学を阻み、奉公に出されます。こきつかわれて辛い思いをするばかりの毎日ですが、歯をくいしばり頑張り抜こうします。頑張っても頑張っても次々に襲ってくる試練。それでも頑張り続ける吾一。大正時代の作品ですから吾一と自分が重なるような生活をしている人も当時は多かったことでしょう。おそらく多くの若い人がこの作品に励まされたことだろうと思います。作品によって一人でも多くの人が励ましを得るというのは作家冥利につきるでしょうね。実に素晴らしい作品ですから是非どうぞ。

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