蔵書

福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

芹沢光治良 「ブルジョア」

芹沢光治良は東京帝国大学経済学部を卒業後、農商務省勤務を経てフランスに渡ります。そこで結核を患い、スイスの療養所で治療を受けます。この時の体験を生かして帰国後に書かれたのがこの「ブルジョア」です。ブルジョアとはどういう意味でしょうか?簡単に言えばお金持ちです。でも貴族のように何もしないでも左団扇というのではなく、自分の会社を経営したり、何かに投資して利益を得たり、エリート路線から官僚になったりして大金を手にした人たち、あるいはそういう人からの恩恵を受ける家族親戚のことです。彼の経歴を見れば誰しも思うことでしょうけど、彼自身ブルジョアです。だから彼の作品というのは明治・大正・昭和初期の貧乏作家たちの、いわば生活に追われる苦しみの中から出て来た作品とはかなり違います。出てくる人物も舞台もハイソサエティで品のある雰囲気があります。女性の読者を虜にするような独特の空気がどの作品にもあるように思います。彼はこの作品を「改造」という雑誌の懸賞に応募し、一等をとったことで華々しく文壇にデビューします。あとは国内においても海外においても名声をきわめ、ノーベル文学賞候補にもなり、川端康成のあとを受けてペンクラブの会長にまで登りつめて、日本文学界の中に大きな足跡を残しますが、そのスタートとなったのがこの作品ということを知った上で読むと感動もまたひとしおです。デビュー作とは思えないハイレベルな完成度にまず驚くと思います。登場人物それぞれが主人公のようにドラマを持っていて、それらがうまく絡みあい、欲望や情熱をいかに人間はさばいていくのかという底辺にあるテーマを写し出して見事な作品に仕上がっています。彼は人間というものを見つめる作品を次々に発表します。後にテーマは神にまで及びますが、とにかく壮大なテーマに取り組んでいます。そういう作品を多く残してくれたことは、後世に生きるものにとっては非常に大きな遺産だと思います。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

芹沢光治良 「巴里に死す」

一体日本人の何割が芹沢光治良の名前を知っているでしょうか?日本人はこの偉大な作家を自分たちの国が生んだという名誉をほとんど認識していないのではないでしょうか?特に昨今の若年層にとっては聞いたことない作家というのが現状ではないかと思います。これはあまりにも悲しいことです。これを読んでいる皆さんの中にもご存知ない方もおられるでしょうからここでとくとご説明したいと思います。芹沢光治良は1896年に静岡に生まれます。東京帝国大学卒業後、農商務省に勤めますが辞めてフランスに渡り、ソルボンヌ(パリ)大学で学びますが、結核を煩ってしばらくスイスで静養します。(この頃の体験は後に作品に多く活用されています。)その後帰国し、小説を発表し始めますがすぐに認められて文壇に登場します。そしてここで紹介する「巴里に死す」は特に高い評価を受け、フランス語にも訳されますがヨーロッパでも非常に好評で、一躍世界にその名を轟かせます。作品は「命」、「運命」、「人生」などをテーマとして、人間という存在の深淵に触れるものが多く、深さと重みを感じさせます。やがて彼の評価はヨーロッパでは絶対的なものになり、ノーベル文学賞の候補にまで挙げられました。あのノーベル文学賞の大江健三郎が師と仰いだほどの人です。どうです?すごい人でしょ?世界中の人が彼の名を知っていて、どうして日本人があまり知らないか不思議でしょ?いい作品、いい作家はきちんと評価する民族でありたいものです。彼が世界で認められる一つの理由は、テーマが民族を超えて人間全体に共感できるものだからではないかと個人的には考えています。是非この代表作「巴里に死す」を読んで、日本の誇りである芹沢光治良という人を知って頂きたいです。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

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