蔵書

福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

大江健三郎 「飼育」

昭和33年第39回芥川賞受賞作です。大江健三郎はご存知のようにノーベル文学賞受賞者です。この人が受賞したことにおそらく誰も異議はとなえないのではないでしょうか?とにかく恐ろしいほどの実力の持ち主です。えしぇ蔵は個人的には日本文学史において、三島由紀夫と大江健三郎の二人はちょっと群を抜いているのではないかと思っています。余談ですが、川端康成がノーベル文学賞を受賞した際、お祝いに駆け付けた三島由紀夫に対して記者が「次は三島さんですね」と言ったのに対し「次は大江君だよ」と答えた話は有名です。当時大江健三郎はまだ33歳です。いかに早くから類稀な才能を開花させていたかがわかりますね(またその才能の将来を見抜く三島由紀夫の慧眼にも驚きます)。そんなすごい人は最初からすごい作品を書いているわけで、この作品の芥川賞受賞は23歳の時です。人間誰しもいい作品を書こうと思えば小手先だけの文学的技術では足りません。紆余曲折を経て様々な経験をし、またたくさんの人と出会って様々な人生を見て、自分の内面を鍛えた上でないと書けないものです。従ってどうしてもいいものが書けるようになる時には年齢的に若年を卒業している場合が多いものなので、どうして23歳でこれほどのものが書けるのか、えしぇ蔵には不思議でしょうがないです。ストーリーは戦争中のエピソードです。ある田舎に米軍の飛行機が墜落し、黒人兵が村人に捕まります。本来は捕虜であるわけですが徐々に主人公の少年や村人と黒人兵の間に心の交流が芽生えていきます。それがある日……あとは読んで下さい。衝撃のラストが用意されています。大江健三郎の文章は自信に満ち溢れています。非常に水準の高いところに達しており、そのために「すごいのはわかるけど、読みにくい」と言う意見もありますが、それは有名な抽象絵画をどう見るかというのと同じでじっくり取り組んでみれば徐々にそのすごさが伝わってくるものです。だから腰をすえてゆっくり日本を代表する人の文学を楽しんでみて下さい。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

大江健三郎 「死者の奢り」

皆さんご存知の通り、1994年ノーベル文学賞受賞者です。この人の存在は文学を蔑ろにする現代の日本において、わずかに残された光であり、最後の誇りです。学生時代からその非凡な才能は大いに発揮され、23歳の頃に「飼育」で第39回芥川賞を受賞します(ちなみにここで紹介する「死者の奢り」は第38回芥川賞の候補作です)。芥川賞とノーベル賞の間にも様々な受賞経験があり、名実ともにもはや孤高の存在です。誰一人否定できない天才です。まだかけだしの頃、ノーベル賞は川端康成か三島由紀夫かという時に、賞を逃した三島に「次は大江君だよ」と言われたエピソードは有名です。そういう次元の違う人が書いたものがいかにすごいか、まずはこの作品で確かめてみて下さい。ほんの数行読むだけでゾクゾクするほど恐ろしい才能を感じるのは間違いありません。作品の発想自体も非常にユニークです。学生である主人公がアルバイトをする話なんですが、そのアルバイトというのが病院の地下にある死体処理室で死体を扱うというもので、暗く陰湿な雰囲気が見事に表現されており、不気味さは半端じゃありません。解剖実験用の死体がアルコールのプールの中でお互いからみあいながらぷかぷかと浮いてるわけです。それを一体づつ運搬するなんて考えただけでもぞっとしますよね。その運搬にかかわる三人の登場人物の心理を通して、死とは何かを考えさせられます。死を見つめさせることにより、読者に生きることの意味を考えさせます。場面が見事に描かれているがためにリアルすぎて、好き嫌いが分かれる作品かもしれませんが、生々しい表現というのも彼の持ち味の一つで独特の世界を築いています。うならせるほど見事な文章で奇抜な題材を描く天才の作品に是非触れてみて下さい。

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