蔵書

福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

司馬遼太郎 「坂の上の雲」

改めて紹介する必要もないほど多くの日本人に知れ渡った司馬遼太郎の名作なので、ここではちょっと角度を変えてご紹介したいと思います。この作品は皆さんもご存知の通り、日露戦争の頃の明治日本を描いています。胃の中の蛙であった江戸時代の日本が、維新をとげて初めて世界という海に出て、欧米列強に追い付こうと国中が必死に頑張ったあの健気な時代の日本です。主人公は3人。日本陸軍において初めて騎兵を組織し、当時最強の騎兵集団であったロシアのコサック部隊を破った秋山好古と、丁字戦法という世界を驚かせた作戦で日本海海戦を劇的な勝利に導いた名参謀の秋山真之、そして俳句、短歌、詩、小説の新しい方向性を確立し、後の文学界に多大な影響をもたらした正岡子規です。三者三様の世界を織り交ぜながら、日本が日露戦争に勝つことによって、世界においてその存在を確乎たるものとすることに成功するまでを描いています。壮大な歴史大作であり、司馬遼太郎の代表作の一つとして位置づけられています。……ここまではよくある書評的記述ですが、ここからはちょっと角度を変えます。この作品を読むにあたって注意して頂きたいことが2つあります。まず1つ目は史実と異なる部分があることです。これは意図したものなのか誤謬なのかは不明です。1~2箇所ではありません。結構あります。それから2つ目は司馬遼太郎は情熱的に書くからこそ面白いのですが、そのせいか史実や人物の捉え方において一方に偏りがあるのは否めません。そこには司馬遼太郎の好みが大きく反映されているように感じます。だからこの作品の内容を全て史実ととらえ、かつ文章の背景にある考え方を100%正しいものと解釈して読むことは危険です。この作品はあくまで小説であり、エンターテイメントです。楽しむための作品ですのでそこをお忘れなく。そのスタンスで読めば、これは紛れもない傑作です。是非そこはご注意下さい。

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司馬遼太郎 「空海の風景」

司馬遼太郎の作品というのはとにかく面白いですよね。その面白さにはまって、次々に買ってきては本棚にずらりと並んだという経験がある人は少なくないと思います。その魅力はなんといっても歴史の空白部分を埋める空想と、息もつかせない物語の展開だと思います。えしぇ蔵もまたあの痛快無比な面白さを味わうために、読んでない作品を探しては買っています。今回のこの作品もそのノリで買いました。ところが、この「空海の風景」はちょっと違います。えしぇ蔵は主人公空海が真言宗を確立すべく歴史の一時代を縦横無尽に駆け巡るようなものを予想していましたが、さにあらず。これは司馬遼太郎が空海という人物に関して調査したその軌跡と、真の人物像にせまるまでの過程を描いています。いわばレポートのようなものです。とはいっても論文のような固いものではなく、随筆として書かれていますので決して読みにくいものではありません。小説のような空想部分は一切入らず、調査結果とそれに基づく推測によって構成されています。だからちょっと予想外なものを感じますが、いえいえこれはこれで実に面白いのです。空海、弘法大師という人物について多くの人が持っているであろうイメージは、仏教史における偉大な存在の一人という感じだと思いますが、これを読めば歴史の中でも群を抜いた偉大な人物であることを学べます。宗教界の巨人といわれる理由がよくわかりました。一人の人物の生き様として読んでも非常に面白いので、宗教に関心がない人も是非読んでみて下さい。やはり司馬遼太郎は読者を裏切りません。

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司馬遼太郎 「播磨灘物語」

黒田勘兵衛孝高。姫路生まれ。秀吉の片腕としてその天下取りを助けた名軍師です。この話はその黒田勘兵衛の生涯をドラマチックに描いています。この人物の人生を少し調べてみれば、なるほどこれはドラマになると誰しも納得します。まさに波乱万丈そのものです。勘兵衛は類稀にみる才を持っていました。秀吉に自分の後に天下をとるのは徳川家康でも前田利家でもなく黒田勘兵衛だと言わしめたほどですからその力量の程が推測されます。時勢が味方すれば天下を取るのも不可能ではなかった人です。もともと黒田家は姫路の小大名、小寺氏に仕えていました。そして祖父重隆の代に姫路城代になります。勘兵衛の頃は織田信長が破竹の勢いで近隣を斬り従えていた頃です。勘兵衛は信長を早くから評価していたので、その傘下に入るべく主君をはじめ近隣の勢力をも説得します。しかし別所長治が信長に反旗を翻したのをきっかけに、摂津の国を任されていた織田家の武将、荒木村重が謀反を起します。勘兵衛はその説得に向かいますがそこで捕縛されてしまい、長期間劣悪な環境に幽閉されます。後に救助された時には足の関節に障害が残っていました。その後は信長に重用され、秀吉の与力として才能を思う存分発揮していきます。苦難の後には栄光に満ちた秀吉の天下統一までの階段が待っていました。そして秀吉の死後は天下分け目の関ヶ原です。さぁここで勘兵衛はどういう行動に出るのでしょう・・・?司馬遼太郎お得意の痛快無比な戦国ものです。とにかく面白いの一言に尽きます。長いですけど一気に読めます。戦国時代には英雄豪傑天才軍師が数多く登場していますが、黒田勘兵衛孝高はその中でも特に異彩を放つ存在であることがわかると思います。勘兵衛の領地は九州征伐の功で秀吉に下賜された豊前の国の中津、今の大分県中津市でしたが、息子の長政は関ヶ原の功で家康に下賜された筑前の国、つまり福岡でした。だから九州の人には馴染みの深い両者ですが、福岡に住むえしぇ蔵にとっては黒田家は特に興味深い一族でもあります。天下人にも匹敵する才を持った武将が何を考え、どう生きたのか、司馬遼太郎の筆でお楽しみ下さい。

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司馬遼太郎 「新撰組血風録」

新撰組というのは非常に浪漫を感じさせる人たちでして、歴史が好きな人もそうでない人もその中の人物にあこがれたという人は多いと思います。それぞれにまっすぐに生きた人たちで、しかも剣の達人ばかり。かっこいいですよね。土方歳三、近藤勇、沖田総司、永倉新八、原田左之助、山南敬助 ・・・ずらり揃ったつわものども。その魅力ある新撰組隊士たち一人一人を取り上げて、それぞれにエピソードを持たせてその生き様を描いた作品がこの「新撰組血風録」です。短編集になっており、一つの短編ごとに一人の隊士が主人公になっています。もちろん小説ですから創作部分も多いですが、おおよそその人物の人柄は出ているのではないかと推測できます。土方歳三、近藤勇、沖田総司などのメインの人たちはよく歴史小説に取り上げられますが、他の隊士にもスポットをあてたこの作品は新撰組ファンなら絶対外せない傑作ですが、新撰組ファンでない人にも面白く読めるのは保証します。いくつか簡単に紹介しますと、多くの作家が描いて皆さんもよくご存知の「池田屋事件」をまた違った角度から描いた「池田屋異聞」、薩摩出身であることに密偵の疑いをかけられる富山弥兵衛を描いた「弥兵衛奮迅」、美青年の加納惣三郎をめぐって隊士同士が争うという男色の世界を描いた「前髪の惣三郎」、沖田総司の実らない悲しい恋を描いた「沖田総司の恋」、近藤勇の愛用としてその名を歴史に残した名刀の真贋がテーマの「虎徹」、初代局長でありながら問題の多い存在として隊士によって暗殺されるに至る芹沢鴨を描いた「芹沢鴨の暗殺」・・・などなど、どの話もきっちりとまとまったエンターテイメントでありながら、歴史の要素も失うことなく興味深いものに仕上がっています。こういう短編では特に司馬遼太郎の底知れない力量が実感できると思います。司馬遼太郎の作品をまだ読んだことがない方には作風に関する一つのガイドにもなり得るかと思います。

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司馬遼太郎 「国盗り物語」

社会人になって間もない頃、就職した会社の先輩に「とにかく面白いから」勧められたのがこの作品です。先輩の指摘通りとにかく面白くて一気に読んでしまいました。そしてそれからです。えしぇ蔵はどんどん司馬遼太郎の世界にはまっていきました。とにかく司馬遼太郎が書いた時代物の小説なら手当たりしだいに読みました。気付いた時には自分の本棚にものすごい数の司馬遼太郎が並んでいました。それにしてもどうして司馬遼太郎の作品ってこんなに面白いんでしょうか?えしぇ蔵のようにはまってしまっていつしか本棚にずらりと並んでいるという人は結構いると思います。実際に多くのファンを持つ人ですからね。おそらく読みやすく、テンポがよく、わかりやすく、感動させるからだと思います。史実から大きくそれることなく、かつ大胆なドラマ性を持たせることがこの人の得意技ですから、多くの人がそこに魅了されるのでしょうね。この作品は戦国時代初期が舞台で、斉藤道三と織田信長、そして明智光秀を中心に話が進んでいきます。読み進んでいくと主人公が交代するところが時代の流れを感じさせて面白いです。あの混乱した時代に日本をまとめようとした男たちの夢と挫折が描かれた見事なエンターテイメントです。読み終わって興奮冷めやらないという人は、「新史太閤記」へと進んで下さい。今度は豊臣秀吉の出番です。これがまた面白くてやめられないのです。また更に次の時代を知りたいという人は「関ヶ原」を読んで下さい。こちらは徳川家康と石田三成が主役です。この3つが司馬遼太郎の戦国三部作です。これらを読破すればまさに戦国時代を突っ走っていくことになります。そして読み終わる頃にはすっかりあなたもファンになっていることだろうと思います。是非この作品を皮切りに司馬遼太郎ワールドにはまってみて下さい。

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司馬遼太郎 「竜馬がゆく」

えしぇ蔵が高校生の頃、普段本なんて読まない友人が夢中で読んでいたのがこの作品でした。「そんなに面白い作品なのか」と思いはしたものの、実際に読んだのは数年後でした。そして読んだ時にはあの高校時代の友人の夢中さがよくわかりました。こんなに面白い物語があるのかと何もかもほったらかしにして読みました。読んだ後に残ったのは坂本龍馬という人物の偉大さと、それを見事に描ききった司馬遼太郎のすごさでした。明治維新の前後には本当に偉大な人物がまとめて世に出て来たような印象を受けますが、中でも西郷隆盛と坂本龍馬は別格の存在だと思います。ただ、坂本龍馬の場合は明治政府誕生の前に若くして亡くなっていますし、維新の功労者として世間一般に知られるようになったのはかなり後のことです。彼を誰知らぬものない永遠の存在としたのは彼のことを書いた作家たちです。今まで多くの人が坂本龍馬の人間像を描いてきました。そして現代の我々が持つ坂本龍馬像を決定的に創り上げたのが司馬遼太郎と言えます。映画やドラマに登場する坂本龍馬はこの作品の中での彼をモデルにしている場合が多いようです。豪放磊落でプラス思考で先進的。大局で物事を判断することができ、義理堅く情にもろい。子どものように純粋であると同時に強靭な精神力を持つ。多くの人が彼に憧れ、彼を目標とするのもわかります。つまりは坂本龍馬もすごいけど、その人間性を作品にして多くの人に生きる勇気を与えた司馬遼太郎もすごいと言えると思います。この作品は背景が激動の幕末なので彼にも劣らない大人物が続々と登場しますし、ストーリーの展開も大きく、非常にスケールの大きな作品です。読み応えは抜群です。司馬遼太郎の作品の中では絶対に外せない名作です。もし、司馬遼太郎を読んだことないという人は是非この作品からどうぞ。

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司馬遼太郎 「梟の城」

ある知り合いに「司馬遼太郎の『梟の城』はかなり面白いよ」と勧められて読んだのはいつだったでしょうか?確か大学卒業して社会人になる頃だったでしょうか?それが司馬遼太郎の作品との初めての出会いでした。この「梟の城」にはすっかりはまりまして、それからしばらくは怒涛のごとく司馬遼太郎作品を買って読みまくりました。今では本棚を2列くらい占領しています。全作品の8割くらいは読んだと思います。えしぇ蔵のようなケースは珍しいのかと思いきや、結構同じように司馬遼太郎にはまって集めまくるという人は多いようです。それだけ彼の作品は人を惹きつけるということでしょうね。この「梟の城」は映画化もされましたが、できれば映像化されたものを見るより原作を読んで欲しいです。そしてあなたなりの司馬遼太郎ワールドを頭に思い描いて、楽しんで頂きたいと思います。主人公の忍者は秀吉の首をとるために城へ侵入します。そしていざ秀吉の枕元に来て暗殺が完了するその刹那に彼は意外な行動をとります。その意外な行動とは?あなたはいつのまにか戦国の世にいて主人公と一緒に胸のすくような冒険をしていますよ。とにかく文句なしの面白さです。1960年に第42回直木賞を受賞した作品で、彼の名を広めた出世作です。この1冊を読めば必ず次の「司馬遼太郎」が読みたくなって、そうして連鎖反応で本棚はいつのまにか「司馬遼太郎」で埋まってる・・・あなたもきっとそうなります。

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