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福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

織田作之助 「夫婦善哉」

日本にとって太平洋戦争に負けたことは、日本人の価値観を大きく揺さぶった一大事でした。それまでの日本には独自の倫理観と受け継がれてきた伝統を後世に伝えようという必死な姿勢がありまして、なかなかに新しいものや考え方が受け入れられにくい土壌がありました。それが戦争に負けることによって既成のあらゆるものへの不信感が募り、日本人は方向性を見失います。いろんな分野において新しく導いてくれる存在を探していたのが戦後間もない頃の日本人でした。そんな時代に最も受け入れられた文学が、既成の考え方を打破した無頼派の人々の作品でした。その筆頭が太宰治、坂口安吾、そして織田作之助です。これらの人々の作品は個々に見ていくとほとんど共通性はないので、具体的に無頼派の作品はこんな感じとは説明できません。ただ、新しい文学を作ろうという姿勢や行動が似ているというにすぎません。織田作之助の作品は、大阪を背景に庶民の暮らしの中でのドラマを人情味を含みつつ表現しています。そこにあるリアリティは自然主義のそれではなく、虚構の上にあるリアリティであり、それはまさに彼の目指していた新しい文学の形ではないかと思います。この「夫婦善哉」は織田作之助の代表作です。甲斐性なしのだらしない旦那を、勝気な嫁が折檻しながらも支えてあげて、ゼロの状態から二人で力をあわせてなんとか生きていこうとする、なんとも汗くさいドラマです。苦労して働いてこのままいけばうまくいきそうなのに、ちょっとお金があまれば遊びに行く旦那には読みながらムカつきますけど、そんなところが非常に人間くさくていいんですよね。毎日のばたばたした生活をよくここまで臨場感いっぱいに表現できるなぁとつくづく感心します。そのへんのリアリティを味わいながら読むと、彼としても本望なのではないでしょうか?

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

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