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福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

安部公房 「砂の女」

安部公房は三島由紀夫らと第二次戦後派と言われた作家です。この人の作品の最大の魅力はストーリーの面白さです。話の筋が面白い作品を書く作家は多いですが、彼の場合は一体彼の他に誰がこういうストーリーを考えだすだろうか?と思えるほどオリジナリティがずば抜けています。なにかとてつもなく奇抜な事件が起きる→それがどんどん発展し複雑化していく→これがどういう風に解決するのだろうかとやきもきさせて→誰の予想をも裏切る結末で終わる・・・大よそこういうパターンの作品が多いです。ストーリーの面白さに最大の重点が置いてある場合、その作品の支持層は国境を超えます。安部公房の作品は非常に外国でのウケがいいです。この「砂の女」も20ヶ国以上で翻訳されていますし、1968年にはなんとフランスで最優秀外国文学賞まで受賞しています。どの国の誰が読んでも面白いものを書くには卓越したストーリーテラーである必要があります。普通の人間にとっては発想とか想像というのは意外と似てくるもので、自分だけの思いつきかと思えば実は既に多くの人が思いついていたりするのはよくある話です。安部公房ほどの創作能力は常人の域を超えているのでストーリーにおいて誰かのものと似ているということはありません。一体どういう脳細胞だったのでしょうか?主人公は砂丘に新種の植物の採集に来ますが、そこでアリ地獄のような砂の穴の中にある家に泊めてもらいます。その家には寡婦が一人で住んでいました。翌朝、前日下りる時に使ったはしごが村人によって外されていたために主人公はその穴から出られなくなり、寡婦との奇妙な生活が始まります。さて、主人公はこの穴から脱出できるのでしょうか?結末が気になってしょうがないでしょ?それで読まずにいられなくなる。それが安部公房ですね。

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安部公房 「無関係な死」

想像してみて下さい。もしあなたが一人暮らしをしてるとして、仕事から帰って来たら部屋に死体があったなんて。しかも全くの見知らぬ他人の死体がですよ。どうしていいか混乱しますよね?もちろん警察に電話するでしょうけど、当然その死体との関係とか訊かれるでしょうし、帰って来たら死体があったなんて変てこな話を信じてもらえるかどうか不安ですよね?この作品はまさにそういう立場になった主人公が、さぁどうしよう、どうしよう、とあたふたしている間に時間が経過し、どんどんまずいことになっていくという話です。安部公房の作品でいつも思うことですが、本当にこの人ほど発想のユニークな作家はいませんね。摩訶不思議な世界を、有り得ないシチュエーションを、奇妙奇天烈なストーリーを考え出す才能はまさに天が授けたギフトでしょう。そして彼の作品によく見られるのは、現在のシチュエーションのみに焦点が絞られており、どうしてそうなったのかという過去の経過は全く無視されているということ。この作品でもそれは言えます。どうしてそういうシチュエーションになったかは全く究明されません。なぜそこに死体があるのか、誰が置いたのか?自殺なのか他殺なのか自然死なのか?この死体は誰なのか?死体と主人公の関係は何なのか?それらのことには一切触れることなく、ただ現在のシチュエーションのみ時間の経過とともに描かれていきます。原因よりも現象そのものに焦点を置く方法は読み手にとってはインパクトもあり、またわかりやすいです。そういう点も外国でうける理由の一つかもしれません。さぁ主人公はこの死体を一体どう処理するのでしょうか?

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安部公房 「他人の顔」

皆さんご存知の安部公房です。それにしてもこの人の脳細胞はどういうしくみになっていたのでしょうか?どこからああいう創造性に富んだ摩訶不思議な発想が生まれてくるのでしょうか?きっと常人にはない思考回路があったのではないでしょうか?「砂の女」、「箱男」、「壁」・・・代表作はどれも他に類を見ない独自の世界です。安部公房は戦後を代表する作家の中の一人ですが、彼の作品は確かに明治・大正では有りえないタイプのものですので、ある意味昭和の日本文学の一つの形と言ってもいいと思います。作品の独自性を確立した一つの要因は科学です。東京帝国大学医学部出身ですから理系の知識は抜群です。彼の作品にはその豊富な科学的知識が大いに生かされています。今でこそ科学的な要素を含む作品はざらにありますが、戦後間もない頃には大きな反響を呼んだわけです。この「他人の顔」の中においても背景にあるのは科学です。主人公は実験中の失敗で顔に怪我をしますが、これが二目と見られないほどのケロイドとなります。顔に包帯をして生活する毎日は次第に主人公の内面を圧迫していきます。(このへんの描写は実際にハンディキャップを負う人の心理を研究したのか非常に真に迫っています。)思いつめた主人公は自らの科学の知識を生かして人口皮膚を作ることに着手します。つまり仮面を作るわけです。街の中でであった一人の男性をモデルにして仮面を作ることに成功した彼はそれを被って別人としての生活を楽しみ始めます。これで彼の苦悩もいくぶん解決して物語は終わりというわけにはいかないのが安部公房です。彼はなんと他人になった顔で自分の奥さんを誘惑します。自分であることがバレないかを試したと同時に、奥さんの貞操も試したわけです。そこに生じる複雑な心境に新たな苦悩が生じて彼は更に苦しみます。さて、奥さんは誘惑に乗るのでしょうか?仮面であることはバレるのでしょうか?予想がつかない結末も安部公房の魅力の一つです。もうこれは読むしかないでしょ?

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