蔵書

福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

山本周五郎 「さぶ」

山本周五郎の作品というのは本当に得るものが多いと思います。「人間として歩むべき道」をビシッと教育してくれるような気がします。様々な苦労を経て、生きることの辛さを実感し、そこから強さを身につけてきた人だからこそ書けるのだろうと思います。この作品では特に彼のメッセージを強く感じます。無実の罪で罪人の更正施設のような「寄場」というところに送られる主人公の栄二は、最初は自棄になり、人や世の中を呪います。それがいろんな人と出会い、いろんな経験を経ていくうちに反省し、人を信じること、人を許すこと、人に感謝することを学んで一人前の男に成長していきます。まさに人としての生き方を学ぶ教科書のような本です。文部省推薦って感じがします。ストーリーの構成もよく、文章も読みやすいので誰でもすんなり入りこめる作品です。どれでも1冊、彼の作品を読めばきっと”山本周五郎”ワールドにはまってしまうことだろうと思いますが、この作品を最初に読んで、それ以後山本周五郎を読まないという人は少ないのではないかと思います。人の心の底に大事なものを残してくれるので、それがきっと次の作品への欲求につながっているのではないかと思います。ところでこの作品のタイトルは『さぶ』ですが、主人公の名前は『栄二』です。あれ?と思いませんか。この作品を読み始めればきっとこういうふうに感じることでしょう。「これ、題名は『さぶ』じゃなくて『栄二』のほうがいいのでは?」と。半分くらい読んで「やっぱり『栄二』にすべきだ」、後半に入って「絶対『栄二』にすべきだ」と感じるはずです。ところがですね、読み終わってきっとこう思います。「なるほど。『さぶ』がいいな」と。そこでまた山本周五郎のすごさを思い知らされるわけです。是非この作品から大事な何かを学んで下さい。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

山本周五郎 「赤ひげ診療譚」

歴史小説となるとすぐに連想するのは戦国時代ものであったり、幕末動乱ものであったりします。そうなると主人公は織田信長、豊臣秀吉、徳川家康、武田信玄、上杉謙信、あるいはそれに続く戦国武将たちであったり、西郷隆盛、桂小五郎、坂本竜馬、大久保利通、高杉晋作、あるいはそれに続く幕末の志士たちであったりする場合が多いです。いわゆる歴史上の偉人たちの出番が多いわけですが、歴史小説というのはその範囲にとどまるものではありません。時代が過去であれば主人公は偉人でなくても構わないわけです。ここで紹介する山本周五郎の小説の主人公というのは、市井で普通に生活する一般人であることが多いです。これはどういうことを意味するかというと、つまり彼の作品というのは普通の人の目線から書かれているということです。舞台こそ過去の日本ですが、そこに描かれているのはどこにでも起こりうるような人間ドラマであって、主張しているのは人としての正しい生き方なのです。そこが彼の歴史小説のほかとは違う点です。この「赤ひげ診療譚」では、貧しい人々の病を治す医者が主人公です。一見、偏屈だけど強い意志と人並み優れた技術と経験を持った医者の朴訥で真っ直ぐな生き方を見て、最初は反発していた若い医者も徐々に影響されていくという話です。黒沢明が映画化したのでご存知の方も多いでしょう。映画では主人公の赤ひげ役は三船敏郎でした。この作品を読めばわかりますが三船敏郎は原作の主人公を非常に巧みに演じています。山本周五郎の描く歴史小説は心にしみます。読後もさわやかで読む人を選びませんのでどなたにもお勧めです。赤ひげの人間性はいわば男として手本にすべきもののような気がしてこれを読んで以後、えしぇ蔵も一つの生き方の参考にしています。

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山本周五郎 「樅ノ木は残った」

山本周五郎の歴史ものというのは他とは一味も二味も違います。歴史的事実をベースにしてそれにエンターテイメントとしてのアレンジを加え面白く読ませるという点では同じですが、彼の場合はそこに”人情”のからみがあって作品全体に絶妙に色を添えます。登場人物の心の動きに共感し自然に涙を誘います。そこが大きな違いです。他の作家の場合だと「あー面白かった!」という満足感で終わりますが、彼の作品の読後には心の底にしみるような悲哀が残り、それが感動となってしばらく尾をひきます。「あぁいい作品読んだなぁ・・・」という感慨を持ちます。歴史小説を軽いものと考える人もいますが、こと山本周五郎に関してはそれはあてはまらないと思います。そこの部分をはっきりと実感できるのがこの「樅ノ木は残った」です。舞台となっているのは江戸時代前期の仙台の伊達家です。三大お家騒動の一つ「伊達騒動」を山本周五郎の独自の解釈によって一大エンターテイメントに仕上げています。4代藩主伊達綱村の時代に重臣たちの間で内紛が起こります。お家騒動というのは藩の維持がうまく出来ていないということで江戸幕府から取り潰しにあう絶好の材料です。藩内に起こったこの内紛が実は江戸幕府が伊達藩取り潰しのために仕掛けた巧妙な罠だと気付いた主人公の原田甲斐は伊達藩を救うために自ら悪役に徹して捨て身で一つの作戦を実行します。命も名も捨てて藩のために彼がしたこととは・・・?江戸幕府に敢然と立ち向かう原田甲斐のかっこよさ!そして最後のクライマックスの衝撃的な幕切れ!感動せずにはいられません。歴史の知識の有無は関係なく楽しめます。この作品で山本周五郎のすごさを知って下さい。

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