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福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

山本謙一 「修羅走る 関ヶ原」

歴史小説が好きな人はおそらく戦国時代が最も興味ある時代だろうと思います。その中でも関ヶ原の合戦というのはあの時代の一つのクライマックスとして一番注目を集める場面ではないかと思います。えしぇ蔵もこれまでに司馬遼太郎、山岡荘八、池波正太郎などなど、たくさんの作家の作品で関ヶ原の合戦の場面を読みましたが、正直に言うとその中でも最も夢中になって読んだのがこの「修羅走る 関ヶ原」です。普通、関ヶ原の合戦のシーンは主人公の人生における一場面であったり、時代の大きな流れの中の一部分として描かれており、いわば通過点に過ぎません。わずか一日の出来事ですからそうなって当然です。ところがこの作品においては、なんと関ヶ原の合戦しか描かれていません。その前後関係は一切なし。あの日の出来事だけを描いています。それなら短い作品なのかと思いきや、これがかなりの量なのです。なぜそうなるのかというと、章ごとに主人公が変わるからです。つまり時系列に則ってあの合戦に参加した武将それぞれの立場、目線から合戦の様子を描いています。ある章ではAさんが主人公でBさんに会いに行った。次の章ではBさんが主人公でBさんの目線でAさんを見ている、という具合です。そうやって”目線”のリレーが行われていくにつれて合戦が徐々に進捗していきます。だから臨場感は抜群です。登場人物それぞれの緊張した様子がリアルに伝わってきます。実に斬新な構成に感服しました。山本謙一は「利休にたずねよ」でもそうでしたが、作品の構成におけるアイディアにおいては他を圧倒しているような気がします。こうやって一人一人に注目して読むと、時代の流れにおいて悪役など存在せず、皆必死に生きていただけなんだと学ばせてくれます。歴史の見方にまで影響を与えてくれる優れた作品ですので、歴史好きの人に限らず是非多くの方に読んで欲しいです。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

山本兼一 「利休にたずねよ」

山本謙一は歴史小説を多く残しており、「戦国秘録 白鷹伝」でデビューし、この「利休にたずねよ」で2008年に第百四十回直木三十五賞を受賞しています。この作品もそうですが、「火天の城」も映画化されたのでご存知の方は多いと思います。この人の歴史小説は他とはちょっと違った視点で描かれているのが特徴です。というのは、いわゆる戦国のつわものどもが国をとったりとられたりという荒々しいドラマを描くのではなく、文化人や職人などの目を通して同じ時代を表現しています。主人公たちが目指すのは敵の首や広い領地ではなく、自分の打込んだもの、究めたい道の先にあるものであり、自分の技を磨くことによって人生修行をしていく姿を描いています。主人公の歩む道はこの作品でいえば茶人ですが、「火天の城」で言えば宮大工であり、「いっしん虎徹」では刀鍛冶、「花鳥の夢」では絵師だったりと、どの作品も絶妙の着眼点で読者のツボを突いてきます。それだけに非常に興味深く読めて、かつ教訓にできる内容になっています。この作品では利休とその周囲の人それぞれの視点から利休や茶の湯のことがそれぞれ短編小説のように描かれており、しかもそれが利休の切腹の時点から徐々に時代を遡っていく形で並べられています。だから最後は若い利休の姿が描かれて終わるわけですが、そこで利休が一生抱き続けたもの、茶の湯に表現されながら誰も見抜けなかった真実が明らかになるという、非常に面白い構成で描かれています。これは画期的なアイディアだと思います。ある意味サスペンス的な要素も満載です。作中で描かれている茶の湯や器、茶菓や料理に関する細かい知識には驚くばかりです。完璧な仕事をする人だなと感じました。面白く読ませて、感動させて、勉強させてくれる素晴らしい作品です。

テーマ:読書感想文 - ジャンル:小説・文学

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