蔵書

福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

塩野七生 「ローマ亡き後の地中海世界」

塩野七生といえばあのローマ帝国の誕生から滅亡までを描いた「ローマ人の物語」が有名ですね。新潮文庫でなんと43巻という超大作です。あの作品はローマ帝国が滅んでイタリアが細かく分裂してしまったところで終わっています。非常に面白い作品なので読み終わった後にどうしても思ってしまうのが、「その後はどうなったの?」ということです。かつて地中海を自分たちの海であると豪語するほどの大国だったのに、分裂してしまっては大して力はありません。その状態で歴史はどう展開していったのか?それを教えてくれるのがこの作品です。実質、「ローマ人の物語」の続編といってもいいと思います。この作品で描かれている時代の地中海は無法地帯となっています。北アフリカを拠点としたサラセンの海賊が好き勝手に船を襲ったり、地中海沿岸の街に上陸して略奪を繰り返していました。それに加えてイスラムの勢力もどんどん拡大して、大国トルコの脅威にもさらされます。それらに対してイタリアの国々を筆頭に地中海沿岸の各国はいかに対処したのか、その長い歴史を描いてあります。期間でいうと西ローマ帝国が滅んだ5世紀から、海賊行為を禁止する国際的な合意である「パリ宣言」が行なわれる19世紀までの長きにわたります。この作品で描かれているのは単に海賊との戦いだけではなく、それぞれの国の生き残りをかけた戦いです。これは陸続きで多数の国家が同居しているヨーロッパ、中東エリアならではの歴史の展開であり、島国であり他からの攻撃を元寇と米軍以外に知らない日本人が読めば本当に興味深いものがあると思います。今のヨーロッパが過去にどうなっていたのか、どうして今の状態になったのかを知る上でも大いに参考になる作品です。この作品もまた面白くて止まらないので文庫で全4巻が一気に終わります。是非皆さんもヨーロッパの歴史に触れてみて下さい。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

塩野七生 「海の都の物語」

ヴェネツィアに行ったことがある方はあの街の美しさと、伝統がそのまま形となったような街並みの素晴らしさに魅了されたことでしょう。実際、ヴェネツィアの写真を見た時にそこに写っている人の服装で時代を判断するしかないほど昔からの姿を守り続けています。この魅力的な街を含む地域一体はかつて一つの国でした。本当に小さい国でしたが、それが「地中海の女王」と呼ばれるほど周囲の海を制していた時代がありました。これはヨーロッパの歴史における一つの奇跡ではないかとえしぇ蔵は思います。周囲を強大な国に囲まれている状態で、海運貿易によるビジネスと強大な海軍力によってなんと1000年ものあいだ独立を維持し続けました。なぜそんなことが可能だったのか?誰しも疑問に思うところですが、それを塩野七生が得意の取材力で徹底調査して、完全な歴史書ではなく小説的なエッセンスも加えて面白く読めるようにまとめあげたのがこの作品です。新潮文庫版で全6冊の大作です。これを読めば「地中海の女王」の1000年の奇跡の謎が解明できます。「ローマ人の物語」の時にもとにかく脱帽しましたが、塩野七生の徹底した取材はもはや小説家のそれではなく学者の域に達していると思います。取材力のある人の作品は必然的にいいものになりますがその典型と言えます。また、ここで学べるヴェネツィアの人々の政治に関する考え方や取組には、小さい国が世界においてしっかりとその存在を確立できるヒントがあるように思いますので、政治の世界に興味がある方にも是非読んで頂きたいと思います。

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塩野七生 「ローマ人の物語」

この作品はえしぇ蔵がイタリアという国の魅力に目覚める最初のきっかけを作ってくれました。だから非常に恩を感じている作品です。紀元前のローマ建国からその崩壊とその後の世界の様子まで、1000年以上におよぶ歴史を順を追って細かくそして面白く述べられた塩野七生の渾身の力作です。単行本で15巻、文庫本で43巻にも及ぶ長さで、単行本は1992年から1年に1冊ずつ刊行され、最後の巻の刊行まで実に15年も要しています。(文庫本の背表紙は紫色なので、おそらく本屋さんで紫色に染まる一角が目に留まったことがある人は多いことでしょう)1年に1冊ですからいかに細かく調べられ、そして丁寧に書かれたかがわかります。その賞賛すべき仕事の量と質には本当に圧倒されます。ローマ帝国はどんな国だったのか?なぜ1000年近くも栄えることができたのか?なぜヨーロッパのほぼ全土、そして中東、アフリカまでをも含む広大な地域を治めることができたのか?そのなぞがこの作品で全てわかります。そしておそらく多くの人がこんな素晴らしい国がかつて存在したことへの驚きと憧憬を感じることでしょう。中でも魅了されるのはユリウス・カエサルの生涯です。ローマ帝国の基礎を築いた人で、そしてヨーロッパを作った人でもあります。人間の全ての歴史において最も優れた指導者だったと言えるのではないでしょうか?そしてカエサルの後には個性豊かな皇帝が次々に登場します。人物や事件だけではなく当時の政治のシステム、インフラの整備、庶民の生活なども細かく述べられています。どの時代も興味深く読めます。皆さんも是非この大作にチャレンジして、かつて存在した素晴らしい国に思いを馳せてみて下さい。

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