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福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

北条民雄 「いのちの初夜」

北条民雄。絶対にこの人は紹介すべき人です。文学史においてはほんの一瞬キラッと光っただけの、流れ星のような存在でしたが、その悲しい人生を反映した作品は珠玉の名作です。彼は大正3年に父親の勤務地だったソウルに生まれます。その後徳島で育ちますが昭和8年、結婚した翌年にハンセン病を発病してしまいます。離婚し家族とも離れて昭和9年に全生病院というハンセン病患者用の病院に入院します。なぜか彼にはこういう悲しい運命が用意されていました。ハンセン病患者の多くがそうであるように、彼も何度か自殺を試みています。そんな彼を支えた大きな力は文学でした。彼は全生病院に入ってから後、その体験をもとに作品を発表します。この「いのちの初夜」は、全生病院に入院した最初の日の出来事をもとに描かれています。いわゆる文学におけるリアリズムというものがこの作品ほど読む側に強く響くものは少ないのではないでしょうか?病院の入口で入るかどうか迷う場面から始まり、中の様子を見てすぐに自殺しようと外に出てしかし失敗する場面、同じハンセン病の仲間の状態・・・リアリズムによって細かく描写された悲しい情景は、非常に重いものを読み手に投げかけてきます。ただその状況を見ただけの者にはここまでは書けないと思います。そこに描かれた人々と同じ立場であり、同じ目線を持った彼だからこそ成し得たものではないかと思います。リアリズムの傑作を残した彼でしたが、昭和12年に結核で亡くなります。わずか23年の生涯です。短くともその人生を作品によって輝かせたことは間違いありません。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

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