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福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

倉田百三 「出家とその弟子」

倉田百三は自らも宗教生活をしており、宗教文学とは分かち難い縁があります。中でもこの「出家とその弟子」は代表作です。大正5年に犬養健らとともに発行していた同人誌「生命の川」でこの作品を発表しますが、当時の若者に絶大な支持を受けました。その勢いは国内に止まらず、海外へも広がり世界各国で翻訳されました。この作品は親鸞とその直弟子の一人である唯円をモデルにしています。一般に宗教文学のジャンルに分類されがちですが、そう聞くとちょっとひいてしまう人も多いと思います。お決まりの小難しい宗教論があぁでもないこうでもないと展開されて、最後にこれが答えなんだよ、わかった?と言われてもまるで狐につままれたおもいで取り残されるというパターンが多いのが宗教文学ですが、この作品はそれらとは全く一線を画していますからご安心を。宗教文学よりも青春文学に分類するほうが自然なくらい、若者の真っ直ぐな想い、真っ直ぐな行動が清々しく描かれている、正真正銘のラブストーリーです。仏の道を選んだ唯円が好きになってはいけない人(かえで)を好きになってしまいその葛藤に苦しみますが、最後には一つの解決策が与えられ・・・みたいな感じで物語は展開し、面白さはテレビのドラマそっちのけです。それに戯曲形式になっていますので、ストーリー重視で読みやすいです。そうは言っても人間の奥底にあるものを描こうとしていますので非常に深いものがあります。冒頭の「人間」と「顔を蔽いせる者」の会話がそれを象徴しています。ただ面白いだけでは世界中に読まれるわけがありません。やはりその辺に国を問わず共鳴させるメッセージが含まれているのでしょうね。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

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