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福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

堀田善衛 「広場の孤独」

作家にはそれぞれその人の作品イメージというか独自の世界がありますが、堀田善衛に関して言うと”国際的”なものがそれにあたるかもしれません。日本語で言うとちょっとしっくりきませんので”インターナショナル”というべきでしょうか?堀田善衛は太平洋戦争末期に国際文化振興会の上海事務所に勤務していましたがそこで終戦を迎え、帰国するかと思いきや国民党に徴用されるというちょっと変わった人生行路を歩みます。そして帰国後は新聞社に勤め、国際情勢が逐一わかる環境にしばらくいました。こういう経験が作品に生かされているのは言うまでもありません。作家生活に入ってからも国際的な視野をもって作品を発表し続けます。ついにはスペインにも家を持ち、日本とスペインを行き来しながら、スペインに関する作品も多く発表しています。なんともかっこいい人生です。この作品の時代は戦後間もない占領下の日本です。主人公は新聞社の臨時雇いとして、日々外電を翻訳する仕事をしています。この当時というのは日本は敗者として表舞台から去り、不安の中に再生の道を探っている最中で、専ら自分の心配しかできない状況でしたが、世界はまだまだ混乱の舞台の上にありました。中国は国共内戦の再開で毛沢東が蒋介石を追い出した頃ですし、アメリカはソ連との関係が極めて緊張していました。朝鮮半島は南北に分かれて激戦を繰り広げているところです。そんな慌しい世界の中で、共産党の動きがどうの、警察予備隊がどうの、と右往左往している日本ですが、その様子が作品の舞台背景からよく伝わります。主人公は上司や同僚、あるいはアメリカ人や中国人の記者、オーストリアの亡命貴族などに囲まれた中で自分がよく見えない状況が続きますが、これこそまさに当時の日本なのではないかなと思いました。そう考えるとこの「広場の孤独」というタイトルが、ぐっと脳細胞に食い込んでくる感じがしました。なるほど戦後間もない頃の日本はまさしく「広場の孤独」です。もしかすると今もそうかもしれませんね。読み解いていくほどに恐ろしいほど深さを感じる作品です。昭和26年に芥川賞を受賞したのも当然です。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

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