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福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

野間宏 「真空地帯」

全体小説という手法を以って、社会全体に対して正面からドカンとぶつかっていくのが野間宏です。社会が抱える問題、特にその中における弱者の立場になって、大きな敵に対して敢然と立ち向かう姿は、作家の在り方の一つの見本を見るようで非常に参考になります。基本的に”弱者の味方”的な考えを貫く人ですが、そんな彼でも戦争中は兵隊に行かなければならないわけです。あの非人間的にしか扱われない集団の中で、彼が強い反感を持たないわけがありません。しかも一時期は社会主義運動をした過去のことを追及され、半年も大阪陸軍刑務所に服役させられます。おそらく想像を絶するひどい扱いを受けたことでしょう。その怒りもあってか、戦後発表されたこの作品では軍隊の中の非人間的な日常を赤裸々に描いて強くその異常性を訴えています。物語の舞台は軍の兵営の中です。いわゆる軍事基地ですね。そこでは兵隊の訓練を中心に、厳しい規律に縛られた日々が送られています。兵士にはたまに生き抜きの時間が与えられ、基地の外への外出が許されますが、主人公はそれができません。なぜなら彼はかつて軍の中で窃盗を働いた罪でしばらく軍の刑務所に服役し、出所して原隊復帰した身だからです。彼は刑務所帰りであることを隠しつつ、自分を軍事裁判へ送った憎き上官の消息を探ります。彼の中では復讐の炎が燃えさかります。やがてはその上官と再会することができ、いざ復讐の鉄拳を下ろそうとしたその時、彼は上官に窃盗事件の始末の驚くべき真相を聞かされます・・・。この作品は長いですけど緊張感が続くせいか、サスペンスタッチのストーリー展開のせいか、読み始めると止まりません。軍隊生活の様子や刑務所での過酷な扱いは野間宏の経験が生かされて非常にリアルに描かれています。軍隊の非人間性を訴えつつ、ストーリーの面白さも追求しているという、あまりないタイプの傑作です。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

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