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福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

丸岡明 「生きものの記録」

小説という一言で片付けてしまえば実に単純なものに思えますが、この中には非常に多くの種類が含まれます。人間は長い歴史の中でこの小説というものを様々な角度から研究し、新たな形を模索し続けて来ました。現代ではこれといって大きな変革は見られませんが、昭和中期ぐらいまではいろんな作家がこれはどうだ、これはどうだ、と新たなものを世の中にぶつけてきました。その中の一つに心理小説というものがあります。これはフランスに端を発したもので、日本では丸岡明のこの「生きものの記録」はその一例としてよくあげられます。心理小説とは、人間の心理状態を詳細に分析し表現して、登場人物の内面の動きを物語の中心におくというものです。Aという人物にはある確固とした考えがあった。一方でBは違った意見を持っていた。反発しあうAとBだが、やがてAはBの意見に傾倒していく。CはAと同意見だったのにAがBよりになったのでAとCの間に溝ができる・・・一例をあげればこういう心の変化そのものを物語の展開の中で軽く流してしまわないで、深く掘り下げて細かく表現していこうとするものです。心理的な動きを目立たせるために舞台背景の自然や建物、登場人物の容姿・服装、絡んでくる歴史的文化的素材の詳細な説明などは極力省いてあります。いわば極めてシンプルな絵柄の掛軸を見るような、非常に美しい花の一輪挿しを見るような、単純に見えて実はかなりの奥行きがある作品が多いです。この「生きものの記録」は軽井沢が舞台です。避暑に来るようなブルジョア層の人々がひと夏の間に経験する出来事の中で、それぞれがどういう心理的変化をたどるかに注目して読んで頂くと非常に楽しめます。やはりどこかフランスの作品を読んでいるような感じがしてきますよ。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

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