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福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

田村泰次郎 「肉体の門」

田村泰次郎と言えば「肉体の門」と言われるほど彼の代表作とされる作品で、これまで何度も何度も映画化されてきました。この作品を映像化するとどうしても娼婦たちの裸体のシーンが多いのでポルノ映画のようになってしまうわけでして、ある意味そのへんをエサにしようという映画製作者側の下心も多少はあるのではないかと勘繰ってしまいますが、この作品のすごいところは田村泰次郎の発したいメッセージが思い切り盛り込まれているということなので、そのへんを理解しつつ作品を読むなり映画を見るなりして欲しいなと思うわけです。では彼が何を言わんとしているのか?それは彼のエッセイの中の一文を読んで頂ければすぐにわかります。「私は肉体の生理こそ、最も強烈にして唯一の人間的営為であることを骨身に徹して知った。人間のどんな考えも、肉体を基盤にしなければ頼りにならないものである。私は肉体から出たものではない一切の思想を、一切の考え方を絶対に信じない」ということなんですがお分かり頂けますでしょうか?いかなる思想もその前には肉体というものがある、人間の生理というものがある、ということを訴えたいわけですね。この「肉体の門」のストーリーはそれを分かりやすく物語りにしたと言ってもいいかと思います。戦後の荒廃した東京で、生きるための最後の手段を使ってたくましく生きる娼婦の群れに、ある日一人の荒くれ男が紛れ込みます。彼はやがて彼女らの頭目的立場になりますが、彼女たちはそれぞれ密かに彼を自分のものにしたいと思いつつ、彼女らの掟に縛られてそれを成しえません。そしてついに一人がその禁を破ったために、みんなでリンチにかけます・・・彼女らの中では野生が全てに先行し、肉体が主役となっています。理想も思想もありません。戦後の一時期に日本で見られたこういう光景は実は人間が思想という衣裳を脱ぎ捨てて原点に帰った時の姿とも言えます。そこを彼は表現したかったのだと思います。メッセージ性の非常に強い名作です。人間として、一度読んでおくべきものだと思います。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

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