蔵書

福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

山岡荘八 「小説太平洋戦争」

日本人にとって最後の戦争(今のところ)である太平洋戦争は、日本の歴史上の大きな転機となりましたが、国自体が崩壊の寸前まで行くほど多くの命と財産を失いました。死者は軍人がおよそ230万人、民間人がおよそ80万人です。わずか4~5年の間にこれだけの人命が失われています。我々の先祖は想像を絶する悲惨な時代を経験しているわけですが、では現代に生きる我々はそれについてどれだけ知っているでしょうか?真珠湾攻撃、東京大空襲、沖縄戦、原爆投下、それくらいは誰しも知るところでしょうが、なぜ国力が自分たちの10倍もある大国に宣戦布告しなければならなかったのか、そして陸軍と海軍はいかに戦ってそして負けたのか、終戦はどのような経緯で行われたのか、問われてみると漠然とした答えしかできないのではないでしょうか?戦争は遠い昔のおとぎ話ではありません。平成に生きる身にとってもある程度は知っておくべき身近な歴史です。そこでお勧めするのがこの作品です。山岡荘八が実に10年もの歳月をかけて完成させた大作です。山岡荘八歴史文庫で全9巻です。日ソ不可侵条約を結んで意気揚々と松岡洋右が帰国する昭和16年4月の時点から、東京裁判の後のA級戦犯の死刑、満州の人々のソ連軍からの悲惨な逃避行などの戦後の悲劇まで、時間をおって細かく描いてあります。主な作戦、戦闘の経緯、その前後の状況、全て理解できます。太平洋戦争の全体の流れを理解するには最適の作品です。是非これを読んで先祖の苦労と過ちを知り、それを今後の日本に生きる身として大きな教訓にして頂ければと思います。あれほどの経験をしながら、また戦争ができる国になるべく政府が徐々に準備を始めてしまったこの危険な時代にこそ、是非読んで頂きたいと思います。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

山岡荘八 「徳川家康」

この作品を初めて見たのは学生の頃に親戚の家に遊びに行った時でした。本棚に同じ装丁の文庫本がずらりと並んだ姿は圧巻で、書く方はもちろんすごいが読む方もすごいなと驚いたのを覚えています。この作品、講談社の山岡荘八歴史文庫で全26巻です。しかも1冊の量も400~500ページとかなりの厚さです。原稿用紙にしてなんと17,400枚。世界最長の歴史小説と言われています。本棚に並べば壮観です。自分にはこんな長いものはとても読めないと思っていましたが、歴史小説でしかも戦国時代をテーマにしていると読めていくものです。しかも山岡荘八の腕にかかれば徳川家康の全生涯がよりドラマティックに描かれており、読みだすと止まらなくなるほどです。歴史小説が好きな人の多くは戦国時代か明治維新の頃が特に面白いと言います。つまり世の中が混乱していた時代ですね。戦国時代は応仁の乱をその始まりとすれば、江戸幕府の成立で平和がもたらされるまで136年も続きました。その間ずっと日本中で戦に次ぐ戦です。各地で力を持った武将が覇を競い、徐々により強大な力のもとに収束されていきます。いわばその最後の勝者が徳川家康です。その75年の生涯をたどっていくことが、戦国時代の半分以上をたどることになるので、この作品によって戦国時代の主な流れを知ることもできます。優れた武将は何人もいたのに、なぜ徳川家康が最後の勝者になったのか?山岡荘八の描く人物像にその答えがあるように思います。よく経営者にも読まれている作品ですが、人の上に立つことにおける様々なヒントも含まれています。面白いだけでなく得るものも非常に多いので是非多くの人に読んで頂きたいと思います。

テーマ:読書感想文 - ジャンル:小説・文学

山岡荘八 「伊達政宗」

歴史小説を書くというのは非常に難しい作業です。小説なわけですから空想で書いても非難されるいわれはありませんが、あまりに史実とかけ離れていると読者はちょっとひいてしまいます。中には丁寧に「そこは違う」と指摘するような律儀な読者もいます。だから歴史小説というのは史実をしっかりと調べた上で、調査に調査を重ねた上で、その結果出てくる空白の部分に自分の想像や解釈を盛り込み、ドラマを作っていかなければなりません。空想だけで書いても史実をきちんと調査していない作品は薄っぺらで軽いものに感じられます。そういう面において山岡荘八という人は本当に群を抜いた存在と言えると思います。調査研究における苦労が読みながらしみじみと感じられます。そしてそこに盛り込まれる山岡荘八ならではの大胆な解釈が実に爽快な筆で書き込まれており、その力強い主張が作品に躍動感を与えています。この作品の中の伊達政宗は彼の筆によると実に精気溢れた豪傑であり、巧みな政治手腕を発揮する策士でもあります。自分に与えられた人生という時間を思い切り使い切るというような痛快無比な生き方を見せてくれます。これは山岡荘八なりの伊達政宗像なわけですが、本当にそういう人だったのではないかと確信を持ってしまうくらい、文章に説得力があります。講談社の山岡荘八歴史文庫で全8巻ですが、面白すぎてあっという間に読んでしまいます。講談社の山岡荘八歴史文庫は全部で100冊あり、歴史を作り上げた様々な人物の活躍が楽しめますが、その共通している点は主人公の人間性がしっかりと描かれており、長編においても全くぶれがないことです。主人公に限らず、登場人物の個性の確立が非常に巧みです。主人公には強靭な精神を持たせる場合が多く、その逞しい生き方に読む側は大いに勇気づけられます。いわば元気を与えてくれる小説とも言えるかと思います。歴史小説の一つのあるべき姿がここにあるのではないかと個人的には思います。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

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