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福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

吉田満 「戦艦大和」

この吉田満という人はすごい体験をされています。東京帝国大学の学生だった彼は昭和18年に戦局の悪化に伴う学徒出陣で海軍に入ります。そして昭和19年に少尉としてあの「戦艦大和」に乗り組み、昭和20年には天一号作戦に参加します。いわゆる沖縄への水上特攻作戦ですね。そしてご存知のとおり「戦艦大和」を旗艦とする第二艦隊は米軍の空母11隻から発進した約380機の猛攻撃にあいます。そして世界を震撼させた巨艦「戦艦大和」は大爆発とともに撃沈されます。乗組員2740名が戦死、生存者は269名といわれています。その生存者の中の一人である彼は、戦争が終わると両親の疎開先である東京の西多摩郡に帰ります。その地にはたまたま歴史作家の吉川英治も疎開していました。吉川英治と対面した彼はその数奇な体験を話したわけですが、吉川英治は是非それを文章として残しておくように勧めました。そういった経緯でこの作品が生まれたわけです。この作品は大変な好評を博し、彼は図らずも文学史に名を残すことになったというわけです。彼は「戦艦大和」の出航準備から撃沈まで全てを見ており、その体験の一部始終をそれは素晴らしい文語体で書き綴っています。余計な作為のない純粋な魂の記憶がそこにあります。まさに名文。これこそどんな名文家をもしのぐ、体験者でないと書けないものです。読んでいくと主人公と一緒に死への不安、別離の悲しみ、国の将来への憂慮を感じていくことができます。あぁみんなこんな心境で戦争に行ったんだな・・・と心の底を揺さぶられる大きな悲しみを感じます。構成も無駄がなく、完成度も非常に高い名作なのに、なんとほぼ一日で書いたそうです。心の中にあったものが一挙に噴出してきたんでしょうね。絶対にオススメの名作です。神様が一人の男に天賦の文学の才を与え、「戦艦大和」の最後を書き残させるために彼を生き残らせたのではないかと思えてなりません。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

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