蔵書

福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

久保田万太郎 「市井人」

久保田万太郎といえば、かつての江戸を思わせるような下町人情ものの第一人者ですね。この人の作品を読むと、当時の東京の下町の人たちの人柄や生き様がよくわかります。今でも浅草あたりに行くとそういう人たちが残っているかもしれませんね。そういった下町の人情とともに、久保田万太郎を語る上で忘れてはいけないキーワードが、「俳句」です。この人はこの世界でもすごい人なのです。中学時代から俳句を作っていたそうで、かなりの数の秀作を残しています。それでこの作品なんですが、この二つの要素がどちらも盛り込まれています。大正時代の東京の下町での物語ですが、ここに蓬里さんという俳句の先生が登場します。他の登場人物も俳句を作ったりしますが、物語の中心にあるのが俳句なのです。一般人の何気ない毎日の生活の中で、ところどころに俳句が登場し、ドラマに色をそえています。その登場する俳句がまたいいんです。作品に盛り込むからには秀作を選んだことでしょうけど、どれもしみじみ読み返したくなるものばかりです。普段の生活の中でふっと出て来た感想を歌にする、その楽しさを学ばせてくれるような作品です。おそらくこの作品を読めば久保田万太郎の俳句をもっと読んでみたくなるだろうと思います。いろんな句集が出てますので是非そちらも読んでみて下さい。そうして久保田万太郎のみならず、俳句に親しみを持ついいきっかけになってくれれば幸いです。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

久保田万太郎 「火事息子」

大きな商業施設に入るようないわゆる大手の新刊本の本屋さんに行っても1冊もその作品が見つからないというかつての大物作家は今やめずらしくありませんが、久保田万太郎までがその中に入っているというのは非常に残念でなりません。大正から昭和にかけて、小説、俳句、戯曲において縦横無尽に才能を発揮し、日本文学の歯車を全力で回してきたと言ってもいい人ですから、本屋さんで見つからないということは本来あってはならないことなのです。日本人の文学への無関心もここまできたかと悲しい限りです。微力ながらここで紹介して一人でも興味を持ってくれる人が出て、本屋さんで注文してくれるようになればとかすかな希望を抱いています。久保田万太郎の作風はとにかく人をひきつける面白さを持っています。軽妙洒脱な語り口が非常にユーモラスで人情味あふれています。そうです、とにかく”人情”というものに重きを置いている感があります。小説においてはその作風でひたすら浅草の街と人を描き続けました。下町の人情を、情緒あふれる古きよき浅草を描いて少しでもその良さを後世に伝えたいという意気込みが感じられます。この作品は「重箱」という名のうなぎ屋さんを舞台に展開される人間ドラマです。小学校の同級生に実際に「重箱」という名のうなぎ屋(当初は川魚屋)の息子がいたそうで、その人をモデルにして書いたそうです。主人公の独白体で書かれていて、友達にでも話しかけるように気さくにユーモラスに、そしてわかりやすく書かれています。非常に読みやすいですしそんなに長くないので時間がある人なら一日で読んでしまうと思います。(えしぇ蔵はこの本を京都に旅行した時に買いましたが、帰りの新幹線の中で読んでしまいました。)登場人物が非常に人間くさく人情味があって、読んでいて心温まるものがあります。この作品をきっかけに、こういう素晴らしい作家もいたんだと一人でも多くの人が気付いてくれたら本望です。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

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