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蔵書

福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

林房雄 「獄中記」

「獄中記」というタイトルからもわかるように、刑務所での日常を綴った手紙形式の作品なんですが、おそらくほぼ100%林房雄の実体験だと思います。1926年、学生だった彼は「京都学連事件」で検挙され、最初の刑務所生活を経験します。その後プロレタリア作家となり、1930年に治安維持法違反で再び刑務所生活です。一旦下獄し、1934年にまた入ってます。この物語は2回目と3回目の刑務所生活の時の手紙をもとにして書かれています。非常に主張が強く、頑固な一面のある人なので妥協することを良しとしなかったからこういう体験をすることになったのかどうか、そのへんの真相はよくわかりませんが、そういう強さが彼の内面にあったことは、刑務所生活を無事に乗り越えるための大きな支えになったことは間違いないと思います。それはこの作品を読み進んで行くとよくわかります。日々の心情が奥さんに出した手紙の文章の中に克明に表現されています。時に怒りや悲しみを記した部分もありますが、概ね前向きに、多少楽天的に書かれており、刑務所の中という絶望的環境にありながらそんなに荒れていたふうには感じられません。孤独や束縛からストレスが生じ、悲しみにうち沈んだり、怒りに荒れ狂うというのが普通の服役者によく見られるパターンですが、彼は実に落ち着いた印象を受けます。淡々とした語り口で綴られています。読みながらしみじみ「この人は強い人だ」と感じました。えしぇ蔵だったらおそらくこんなに前向きに強い意志を持ち続けることはできないだろうと思います。林房雄のそういう人間的な強さには敬服せずにはいられません。この強さが文章においても行動においても彼を抜きん出た存在にしたことは間違いないと思います。三島由紀夫があこがれたというのもわかるような気がします。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

石川達三 「悪女の手記」

「蒼氓(そうぼう)」で1935年に名誉ある第1回芥川賞を受賞して華々しく文壇に登場した石川達三ですが、その内容はブラジル移民の悲しい現実を描いて社会に問題提起するものでした。その後も社会批判的な作品が多く、”ジャーナリスティック”という言葉がよく似合う作家になりました。そういった訳で社会派的なものは苦手だという人は石川達三を敬遠しがちですが、彼の作品の守備範囲はそれだけではありませんので誤解のないように。ここで紹介する話は全然そういった分野のものではありません。見方によっては私生児を蔑視する当時の社会に憤ったものというふうに捕らえられないこともないですが、あんまり難しく考えないで普通に読んで十分に面白い作品だと思います。ストーリーとしては単純な内容です。主人公は少し人より気が強いくらいで、どこにでもいそうな平凡な女性でした。彼女は私生児でしたが、持ち前の気丈さでそのことをコンプレックスとはせず、むしろ強く生きていくためのバネとします。妊娠させた男に捨てられて惨めな人生を送った母を見て、自分はそうはならないと強い意志を持って生きていきますが、所詮ままならぬ運命に翻弄され、結局は母と同じように好きな男に捨てられ、同じように私生児の母になります。ここから彼女の転落の人生が始まり、男というもの全体に対する復讐が始まります。お金を持っていそうな男をたぶらかし、利用し、離れていきます。次から次に。そして最期にやっと本当の幸せが見つかりそうになった時、運命の皮肉でまた最初と同じように捨てられます。ここで彼女は裏切った相手の男に対し、人生を台無しにされた男というもの全体に対し、そして幸せをつかむことができなかった自分自身に対し逆上し犯罪に至ります。この作品は最初に裏切った男へ送る手記という形で書かれていますが、非常に面白いので一気に読めました。難しく考える必要はありません。普通に楽しめる作品です。

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丹羽文雄 「蛇と鳩」

丹羽文雄の作品の中にはしばしば宗教がからんできます。これはいわば彼にとっては宿命と言ってもいいかもしれません。もともと三重県にある浄土真宗専修寺高田派の崇顕寺の跡取りとして生まれた彼は、人生のスタートから宗教を背負っていました。仏の道へ入ること、家を継ぐことを拒否し、文学の世界に入って大成功するわけですが、最期まで作品の中に宗教の反映があったというのは彼にとってなにか大きなものを意味するような気がします。この作品は戦後の国土も人心も荒廃した日本において、雨後の筍のように次々に出現した新興宗教をテーマにしています。乱れた人心が心の安寧を求める時代には決まって新興宗教が活発になりますが、太平洋戦争が終わった後の昭和20年代がまさにそれでした。その中には人心を救うというよりも、新たなビジネスと考えて立ち上げたものもあると思います。この作品の主人公の義兄が狙ったのがそれでした。新しい新興宗教を作って大儲けしてやろうという壮大で邪悪な計画を立てた義兄は、主人公を手下として使って手伝わせます。まずは既存のあらゆる宗教を調べて、教祖になるのにふさわしい男を捜させます。その過程が非常に興味深いものがあります。実際に丹羽文雄があらゆる宗教について細かく調べたことがよくわかります。やがて主人公は一人の男を見つけ出します。義兄はその男に教祖の地位を与え、必要な環境を整え、宣伝に莫大な費用を投じ、サクラを使った巧妙な勧誘作戦も展開して一大新興宗教を築きあげます。主人公はその邪悪な計画が身を結ぶ一歩手前において、その所業の非道さに気付き反攻する決意をします。さぁこの偽の宗教団体はどうなるのでしょうか・・・?宗教という重荷を背負って生きた丹羽文雄がその運命と真っ向から取り組んだ傑作です。

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伊藤整 「火の鳥」

伊藤整は詩や小説だけでなく、文芸評論においても大きな足跡を残した人です。作家やその作品の本質を鋭くとらえることにおいては、非凡なる才能を持っていたといっていいと思います。本質を鋭くとらえるという意味では、女性の心理においても同じことが言えると思います。1954年に婦人公論に連載されたエッセイをまとめた「女性に関する十二章」はベストセラーになります。男性でありながら女性の心理をとらえることができるというのは、偉大なる作家でもなかなか難しいものがあります。伊藤整はそれを見事にやってのけたわけですが、その顕著な例はこの作品において見ることができます。主人公は類稀な美貌を持ったハーフの女性です。まわりが少し距離をおくほどの美しさが彼女の最大の武器で、そのことを彼女自身はっきりと自覚しており、自らの武器を有効に活用して生きていくという話です。主人公の内面の悩みや、それを克服していく強さ、一人よがり的なプラス思考、したたかな思惑、狡猾な逃避、臨機応変な追従……そういうものを女性の立場になって実に見事に描いています。作家の名前を知らずに読めば女性が書いたものと思う人は多いはずです。それほど卓越した心理描写です。主人公は美貌を生かして学生時代に演劇の世界に足を踏み入れたことからその道に進み、舞台では花形となりやがて映画にも出演します。自信家の彼女は外部にはわがままとしか映らないプラス思考で常に前進します。様々なトラブルやゴシップが彼女のゆく手を阻みますが、たくましい彼女は女性の武器である涙やその場だけの愛情で切り抜けます。きっと芸能界にはたくさんこういう女優がいるのではないかと思います。またこれくらい強くないと生き残れない世界ではあると思います。したたかに生きる美貌の女優の生涯、伊藤整でないと書けなかった傑作だと思います。

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舟橋聖一 「悉皆屋康吉」

まずは間違われやすい名前から。船橋ではなく舟橋です。読み方もフナバシではなく、フナハシです。この人は「行動」という雑誌に発表した「ダイヴィング」という作品で「行動主義」というものを提唱したことで話題になりました。その行動主義について書いていると長くなりそうなのでそれはまた別の時にということで。この人は「雪夫人絵図」などの風俗小説で人気を得ましたが、ここで紹介する「悉皆屋康吉」はかなり色合いが違うのでご注意下さい。この作品は主人公が若い頃にある業界に足を踏み入れて、苦労と努力の積み重ねの上についに成功を勝ち得るといういわばサクセスストーリーです。まぁ文学の世界にはよくあるパターンですね。それが今回は悉皆屋という業界において描かれているということです。悉皆屋とはなにかご存知ですか?着物を染めたり、シミをとったり、洗い張りをしたりする仕事を請け負うのが悉皆屋です。今で言うなら着物のクリーニング屋がもう一歩踏み込んで着物の色や柄のデザインのことにまで仕事の幅を広げているような感じですね。主人公の康吉はある傾きかけた悉皆屋で働いていました。先行き不安になった旦那がライバルである別の悉皆屋にその傘下に加えてもらうように頭を下げます。その使いになったのが康吉です。それまではライバルだったわけですから頼まれたほうも嫌味を言ったりしてなかなかうんと言いませんが康吉は何度も通って承諾を得ます。そして仕事をもらって日々汗水たらして働き続け、番頭さんに叱られながらいろいろなことを教わり、徐々に成長していきます。ある日、着物の色柄のことで失敗をして叱られたことがきっかけでその世界のことを必死で勉強し、その結果深く興味を持つようになります。そして最終的には自分のオリジナルの色を作り出すことに成功します。前途洋々に見えた康吉の人生ですが、そこに関東大震災が起こり全てはゼロに戻ります。しかしそこであきらめる康吉ではありませんでした・・・。こういう頑張る人の話は個人的に大好きです。さぁ康吉は最期はどこまで行くのでしょうか?

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今日出海 「山中放浪」

今日出海は、型破りな人生、型破りな性格に象徴される今東光の弟です。こちらは文壇から一時疎外された兄とは違い、順調に文学の道を進みます。芝居や映画にも活動の範囲を広げていましたが、太平洋戦争によってその進路を阻まれます。昭和16年に陸軍の報道班員としてフィリピンに渡り、マニラに約1年滞在します。その頃の日本軍はいけいけドンドンで向かうところ敵なしの快進撃。マニラの日本人たちの間にも明るい雰囲気があったわけですが、2度目に同じマニラに派遣された昭和20年の時点では米軍の上陸を待つだけの敗色濃厚な暗い雰囲気でした。この作品はこの2度目の派遣の際の体験を綴ったものです。作者の実体験そのものですから戦争記録文学と言っていいと思います。台湾から飛行機で到着した時点で既に、なんでこんな時に来たのか?と訊かれるほど事態は切迫していました。そしていきなりの逃避行です。それからの5ヶ月間というのは文字通り地獄です。昼間は上空からの爆撃や機銃掃射があるので動くことができません。夜になってこそこそと移動します。食料もないし医療品もありません。同じようにぼろぼろになって逃げていく日本兵を見て、これがあの昭和16年の滞在の時に見た輝かしき皇軍の姿かと虚しさ、悲しさに襲われます。制空権も制海権も奪われてしまっては援軍はもちろん、救助にも来てくれません。飛行機で脱出しようとみんな微かな希望を抱いて飛行場の方面に集まりますが飛べるものは一機もありません。そんな時にたまたま不時着した友軍の飛行機に空きがあって乗せてもらえることになり、彼は奇跡的に助かります。無事に台湾に戻ってから、現地の悲劇を知らない人たちによる無責任な発言に彼は憤慨します・・・。逃げ回る間も日記だけは書き続けたということが功を奏して、こと細かに記述された逃避行の様子は実に鬼気迫るものがあります。貴重な記録だと思います。是非ご一読を。

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石坂洋次郎 「海を見に行く」

石坂洋次郎の「青い山脈」や、「陽の当たる坂道」などの健全な青春を描いたものは、そのままドラマや映画の脚本にできるような印象を受けます。はっきりとしたストーリー展開、個性豊かでかつ善良な登場人物、ハッピーエンドな結末、芸術性よりも明確さを重視した状況描写……などなど、要するに全体的にわかりやすいのです。実際にこういった作品が多くの人に読まれたことにより、彼は「百万人の作家」とまで呼ばれました。こういうふうに書くとベストセラーを連発する大衆作家というふうに誰しも認識することでしょう。でもそれは彼の一面しかとらえていないということをここでえしぇ蔵は強く主張したいのです。彼の名声を高めた代表的な作品の名前をあげる時には必ずこういった大衆小説的なものが先に出てきますが、文学性の極めて高いものもたくさん書いていることを知って頂きたいのです。文学の中に芸術を追い求める人たちの中には、「なんだ、あの健全小説の石坂洋次郎か」と思っている人も多いと思います。えしぇ蔵としてはここで紹介する「海を見に行く」や、「草を刈る娘」、「壁画」、「リヤカアを曳いて」などの作品も是非読んで頂きたいです。きっと石坂洋次郎という人の作品のイメージがかわると思います。実際、えしぇ蔵もこれらを読むことで大きく石坂洋次郎観が変わりました。この作品はまだブレイクする前、学生結婚した若い彼が文学の道を遠望しつつ焦慮の日々を暮らしていた頃をモデルにしたものです。夢を追いかける者が途中で抱く不安や焦慮が作品全体でうまく表現されている傑作です。特に書き出しの素晴らしさは秀逸です。初期に発表された作品で、これが注目されたことにより作家としての道が開けます。基本的にはこういう傑作を早い時期から書けた人なんだということを知ってもらいたくて紹介しました。健全な青春ものとはちょっと違う石坂洋次郎をお楽しみ下さい。

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中山義秀 「咲庵」

中山義秀は成功するまでに結構苦労しています。偉大なる横光利一の影響を受け、その後姿を追いかけるようにひたすら文学の道を進みますが、なかなか目が出ません。そして横光利一的な作風を捨て、独自の文学世界を切り開いたことが功を奏して名を馳せます。そこからは一気に才能開花です。とにかくたくさんの名作を残しています。ジャンル的に非常に多岐に渡るのが彼の特徴でもあります。「厚物咲」や「碑」のような非常に優れた文学作品を筆頭に、戦記ものの傑作「テニヤンの末日」、一人の非情な人間の改心の物語「少年死刑囚」、そしてここで紹介する完成度の極めて高い歴史物の「咲庵」など、並べてみるとどれも傑作で、しかも同じ人が書いたとは思えないほど作風が異なります。才能の幅というか、力量の厚みというか、そういったものを感じさせます。高く評価されてしかるべき作家の一人であることは間違いありません。ここで紹介する「咲庵」は、戦国時代を背景に明智光秀の生涯を描いています。斉藤道三の最期を見届けるところに始まり、本能寺に織田信長を討ち、その後すぐに主君の仇として羽柴秀吉によって討たれるまでの物語です。明智光秀を作品の主人公に選ぶ作家は多いです。彼が信長を裏切ったことは日本史上の大きな謎で、そこにロマンを感じるからかもしれません。みんなそれぞれに謀反の理由を作品の中で推理していますが、この作品の中でも中山義秀独自の解釈が描かれています。それが他の作家とちょっと違った視点だったので、えしぇ蔵は「お?そういう見方をするか」と興味深く感じました。水準の高い文学小説も書ける人がきっちりと調査した上で独自の解釈で描いた戦国絵巻は、これ以上一字一句修正しようのない傑作に仕上がっています。文学好きの人にも歴史好きの人にもオススメです。

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坪田譲治 「善太の四季」

坪田譲治について調べると、児童文学作家というふうに書かれています。確かに多くの児童文学作家を育てていますし、児童文学の雑誌「びわの実学校」を発行したり、日本児童文学者協会の第3代会長を務めたりしているわけですからその表現は間違いではありません。ですがここで一つ皆さんの注意を促したいのです。一般に児童文学とくれば、子どもが読む絵本の延長のように思われて、大人は興味を持たないものです。坪田譲治の作品をそういうものと解釈されたら、これは大きな間違いです。確かに子どもも読めますが、作品の内側に横たわるテーマであるとか、巧みな構成であるとか、美しい表現などの本当の良さは大人にしか理解できません。子どもをあやすための児童文学とはとても次元が違います。例えばこの「善太の四季」を読んだ時は、普通の文学小説との違和感は全く感じませんでした。読み終わった後、あまりの作品の完成度の高さに思わずうなってしまったほどです。坪田譲治の作品はそれくらいしっかりとした、奥行きのあるものです。えしぇ蔵としてはむしろ大人の人に多く読んで欲しいと思います。この作品に出てくるのは「善太」と「三平」の兄弟です。泣き虫の三平を優しい善太がいつも面倒みてあげます。わんぱく盛りで、視野に入るいろんなものが面白く映り、伸び伸びと育っている印象を受ける微笑ましい二人です。この二人が見た春夏秋冬のそれぞれ一コマを実に美しく描写しています。読んだ人に必ず望郷の想いを起こさせるような、優しく懐かしい情景が展開されています。最後はちょっとドラマが用意されており、非常に完成度も高い名作です。彼の作品には「善太」と「三平」がよく登場します。この幼い兄弟の活躍を他の作品でも是非読んでみて下さい。大人にも心に残る名作ばかりです。児童文学という言葉にはとてもおさまりきれません。

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尾崎士郎 「人生劇場」

この作品は尾崎士郎の出世作でもあり、代表作でもあります。1933年に都新聞に連載された時に好評を得て、本もベストセラーになりました。それ以来、その続編という感じで次々と書き継がれていきます。ここで紹介するのは主人公の幼年時代から、青雲の志を持って社会に出るまでの部分で、「青春編」と言われています。その後に発表されたのが、「残侠編」、「風雲編」、「遠征編」、「夢現編」、「望郷編」、「蕩子編」です。全部あわせるとかなりの量になります。「人生劇場」全編をとおして言うなら、この作品は尾崎士郎にとってまさにライフワークです。尾崎士郎自身、この「人生劇場」という言葉に非常に愛着を持っていたそうです。主人公の幼い頃の話に始まり、けんかありの、恋愛ありの、家庭のごたごたがありの、受験がありの、大きな夢がありの、楽しいこと悲しいこと、もろもろの山や谷を越えて一人前の大人になり、社会に巣立っていく一人の人間を描くというストーリー展開は、日本文学はもちろん、世界中の文学においても多く見られます。そしてそのどれも面白く読めるものです。それは、自分の人生と重ねながら、自分が歩いてきた道を振り返ってそれと比較しながら読むので、主人公の思いを共感できるからだと思います。だから読みながら応援してしまうんですよね。この「青春編」だけでも結構長いですが、夢中で読み進んでいけます。ただ他と違う特徴として、少し任侠の世界が混じっています。ですが今時の弱いものいじめをする社会悪としてのそれではなく、かつての”曲がったことには我慢がならない”、”男の誇りは死んでも守る”、”受けた恩は一生忘れない”的な、あの昔懐かしい任侠の世界ですから、さっぱりしたものがあってこれはこれで作品に特徴を持たせてていいものです。尾崎士郎の名作、あなたの人生劇場を思い浮かべつつ読んでみてはいかがですか?

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